大日本帝国憲法第3条

大日本帝国憲法第3条の概要

大日本帝国憲法の第1章に位置する第3条は、「天皇は神聖であり侵してはならない」と規定されています。この条文は、天皇の尊厳や名誉を保護し、国政における大臣の責任を明確にすることで、天皇の権限行使に伴う結果責任を回避する意図が込められています。

法解釈上は、天皇に対する不敬や身体を侵害する行為は、「不敬罪」として刑罰の対象となり、逆に天皇は非難から免れることを意味します。このため、天皇は「無答責」の原則に立ち、国民や国務大臣に対して直接の責任を持たないという特徴があります。

条文の解釈

条文

天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス

現代の解釈

天皇は、神聖であり、侵害してはならない。

歴史的背景

天皇の権限や地位は、日本の古来からの伝統に基づいています。帝国憲法の第1条では、天皇が国家を治める統治権について定められており、その下に第2条で皇位の継承も規定されています。これによって、天皇は日本の国制において重要な役割を果たす存在とされています。

第3条は、天皇が国務大臣の補佐を受ける仕組み、すなわち「輔弼」を根拠として、新たに生じる政治的責任を大臣が負うことを定めています。これは「君民共治」と呼ばれる日本独自の統治理念に基づいており、天皇と国民との協力による政治を促進するものです。

条文の意義

本条文は、一見すると天皇の絶対的な地位を保障するように思えますが、実際には立憲君主としての天皇の「無答責」を表現しています。伊藤博文は、天皇を政治的争点化しない構想を持ち、内閣や議会との間に生じる問題には、枢密院の存在を通じて天皇に助言を行う形を提案しました。

天皇の神聖不可侵性

「神聖」とは、天皇に対する従来からの国民の尊敬の念を表し、「不可侵」とはその尊厳が侵されてはならないことを意味します。この2つの側面は、平行して対応しているため、いかなる力によっても天皇の身を侵すことを許してはならないという原則が存在します。

不敬行為の禁止

天皇に対する不敬行為は法律上禁止されており、不敬罪はそのための罰則を定めています。この規定は、国と国家の安定を保つためにも重要です。

政治的責任の不在

天皇が権限を行使する場合、どんな法律や条約に違反しても、その責任を負うのは国務大臣であり、天皇自身はその責任を持ちません。ここにおいて、天皇の「御一身」には法律の適用が基本的にありません。

皇室財産と民事裁判

一方で、皇室に関する財産については一定の例外があり、特に御料に関する民事裁判は行うことができます。ただし、天皇自身が原告や被告となることはなく、宮内大臣が代理として訴訟に関与する仕組みがあります。

他の皇族の扱い

この神聖不可侵の原則は、天皇に限らず皇後や摂政にも及ぶことがありますが、完全な権限を持つのは天皇だけです。皇族は、天皇の監督下に置かれるため、一定の制約を受けます。

制定プロセス

本条文は、当初の草案には含まれていなかったものの、政府顧問のロエスラーの提唱により憲法に盛り込まれることになりました。特に西洋の憲法からの影響が強く、その文言がそのまま取り入れられた経緯があります。

まとめ

大日本帝国憲法第3条は、天皇の地位を守る重要な基盤となり、同時に国民の権利や尊厳をも考慮した複雑な内容を含みます。天皇の神聖不可侵性が持つ意味やその歴史、政治的背景を理解することは、日本の憲法史において重要な視点となるでしょう。

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