大本洋嗣

大本 洋嗣（おおもと ようじ）

大本洋嗣は、1967年6月26日生まれ、千葉県出身の日本の水球指導者であり、理論家です。現在、日本体育大学体育学部体育学科の教授を務め、同大学水泳部の部長として学生の指導にあたっています。

市立千葉高校を卒業後、日本体育大学に進学し、同大学院の修士課程を修了しました。選手としても卓越した才能を発揮し、大学1年生にして水球日本代表に選出。1994年まで代表選手として活躍し、1991年、1993年、1994年にはチームの主将を務めました。選手時代には、1990年のアジア大会で銀メダルを獲得するなど、国際舞台での経験を積みました。国内では日本選手権での優勝経験も複数回あります。

現役引退後の1998年には、元日本代表選手らと共に社会人チーム「30Club」を結成。翌1999年には三建設備工業株式会社の協賛を得て「三建30Club」として活動し、競技普及にも尽力しました。

指導者としては、特に日本代表監督として知られています。2001年、33歳という史上最年少の若さで水球男子日本代表監督に就任し、2006年まで指揮を執りました。その後、2012年に再び男子代表監督に復帰。この2期目において、大本氏は日本独自の攻撃的なディフェンススタイル「パスラインディフェンス」を考案しました。この戦術は、相手にプレッシャーをかけ続ける革新的なスタイルとして注目され、海外からは「ジャパンプレス」と呼ばれました。この戦術を駆使し、日本代表は国際舞台での競争力を大きく向上させました。

2015年のオリンピック予選では、日本男子水球を1984年のロサンゼルスオリンピック以来、実に32年ぶりとなるオリンピック出場（リオデジャネイロ大会）へと導く快挙を達成しました。リオ五輪本大会では、セルビアやギリシャといった世界の強豪国を相手に互角の戦いを展開し、日本の水球の存在感を示しました。さらに、2017年の世界選手権（ブダペスト）ではアメリカに歴史的な勝利を収め、過去最高タイの10位という成績を残しました。2018年のワールドリーグスーパーファイナルでは4位となるなど、着実に世界のトップレベルに近づきました。

東京オリンピック終了後、男子代表監督を退任しましたが、2021年のアジア選手権や2023年の世界選手権では女子日本代表監督も務めました。現在は、日本水泳連盟水球委員会のテクニカルディレクターとして、日本の水球強化全般にわたる重要な役割を担っています。

大学での指導に加え、自身が代表を務めるクラブチーム「Kingfisher74」を率いて、国内最高峰の日本選手権で圧倒的な強さを見せています。これまでにKingfisher74を8回の優勝に導いており、特に2019年から2024年にかけては、前例のない6連覇という偉業を達成し、国内におけるその指導手腕の高さを示しています。

また、水球に関する専門知識をまとめた書籍を複数出版しており、競技の理論や技術の普及・発展にも貢献しています。代表的な著書に『水球マニュアル』や『超攻撃型―水球日本代表 ポセイドンジャパンの挑戦』などがあります。

長年の選手および指導者としての功績に対し、日本体育協会やミズノスポーツ振興財団、日本水泳連盟などから数多くの表彰を受けています。

なお、2018年には、女子代表の強化方針に関する自身のSNSへの投稿が不適切と判断され、所属団体からけん責処分を受けたことがあります。

選手として、そして指導者、理論家として、大本洋嗣氏は日本の水球界の強化と発展に長年にわたり貢献し続けています。

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