大東水害訴訟

大東水害訴訟：河川管理の責任を問う裁判

大東水害訴訟は、1972年7月に大阪府大東市を襲った豪雨（昭和47年7月豪雨）に端を発します。この豪雨により、市内を流れる寝屋川が氾濫し、低湿地帯に位置する多くの住宅が床上浸水の被害に見舞われました。

訴訟の背景

被災した住民たちは、寝屋川の支流である谷田川の治水に不備があったことが被害の原因であると考え、国家賠償法第2条に基づき、国、大阪府、大東市に対し損害賠償を求めて提訴しました。

訴訟の争点

この訴訟における最大の争点は、自然公物である河川の設置・管理に瑕疵が認められるかどうかの基準でした。河川管理者の責任範囲が明確でない中、裁判所は具体的な判断基準を示す必要に迫られました。

最高裁判所の判決

訴訟は最高裁判所まで争われ、1984年1月26日、最高裁は重要な判決を下しました。判決では、河川改修計画が未だ進んでいない河川について、以下の2点を基準としました。

1. 改修計画に不合理な点がないこと
2. 計画を変更すべき特段の事情が発生していないこと

これらの基準を満たす限り、未改修部分で水害が発生しても、河川管理者である国に損害賠償責任はないと判断しました。

判決の影響

この最高裁判決は、その後の水害訴訟に大きな影響を与えました。特に、行政責任をより限定的に解釈する傾向を生み出し、「水害訴訟冬の時代」と呼ばれる状況をもたらしました。多摩川水害訴訟における1990年12月13日の判決で付加意見が出されるまで、この傾向が続くことになりました。

関連事項

国家賠償法
加治川水害訴訟
多摩川水害訴訟
志登茂川水害訴訟
寝屋川

外部リンク

大東水害訴訟を顧みて - 谷口光臣（元大阪府水道部長） - 2006年4月の講演録

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