昭和47年7月豪雨

昭和47年7月豪雨（1972年）の記録と爪痕

1972年（昭和47年）7月、日本列島は記録的な豪雨に見舞われました。気象庁はこの災害を「昭和47年7月豪雨」と命名し、特に7月3日から7月13日までの期間に発生した災害を中心に記録されています。しかし、梅雨前線と台風の影響により、7月15日にも豪雨が発生しており、これらの災害も合わせて振り返ります。

概要

この豪雨による災害は「昭和47年6月6日から7月13日までの断続した豪雨等による災害」として激甚災害に指定されました。梅雨前線の位置によって各地で災害が発生し、6月から九州の一部で洪水が発生した後、7月2日からの梅雨再開により、全国的に洪水や土砂災害が多発しました。気象庁が命名した期間中の主な災害は以下の通りです。

7月5日：高知県で土砂崩れ
7月6日：熊本県で山津波（天草大水害）
7月7日：静岡県で土砂崩れ
7月8日：秋田県で洪水
7月9日：青森県・山形県で洪水
7月10日：福岡県・佐賀県・広島県で山崩れ、長野県で洪水
7月11日：島根県で洪水、広島県・岡山県で山崩れ
7月12日：山口県で洪水およびがけ崩れ、東京都で洪水、神奈川県で山崩れ
7月13日：愛知県・岐阜県で洪水および山崩れ

これらの災害は、前半は気流や低気圧の影響、後半は台風の特異な形態が梅雨前線を活発化させたことが原因で発生しました。洪水は河川の氾濫だけでなく、島根県の宍道湖堤防決壊も引き起こしました。土砂災害では、表層の土砂流出に加えて崖錐の崩壊が多発し、熊本県の天草諸島や高知県で甚大な人的被害をもたらしました。豪雨は沿岸部よりも山間部や河川の上流・中流域で多く発生しました。

なお、島根県では豪雨により観測データが一部水没し、正確な降水量の最大値を記録できていません。

当時の田中角栄内閣は、発足直後の大規模災害への対応に追われることとなりました。

降水量の記録

豪雨は期間と地域によって降水量の特徴が異なり、気象庁が公開している各市町村の最大1日降水量を記録した日付で分類すると以下のようになります。

7月3日～6日
7月7日～9日
7月10日～13日
7月14日～15日

また、この時期に発生した台風の中には、観測史上最も寿命の長い台風や、4番目に長い台風も含まれており、これらの台風も豪雨被害を拡大させる要因となりました。

各地の被害状況

九州地方

九州地方では、7月6日の熊本県球磨地方・天草諸島を中心とした豪雨と、7月12日午後からの九州北部での豪雨が主な災害でした。これらの地域では、過去の地震や台風による被害からの復旧が十分に進んでいない場所もあり、被害が拡大しました。

天草大水害

天草地方の上島（天草市・上[[天草市]]）では、特に姫戸町（上[[天草市]]側）で土砂災害が多発し、多数の死傷者が出ました。上島は急峻な山林が多く、集落は海岸沿いの狭い平野部に点在しています。7月6日には記録的な豪雨に見舞われ、山崩れや土石流が海岸部の民家を襲いました。この災害で、死者122人（または123人）、負傷者311人、被害額480億円という甚大な被害が発生しました。

南九州

球磨地方では、7月4日から6日まで降り続いた雨により、球磨川流域で被害が発生しました。球磨川は前年にも水害に見舞われており、2年連続での豪雨被害となりました。

川内川流域でも、前年の洪水被害や直前の梅雨前線による洪水があったところに、今回の豪雨が重なり、甚大な被害が発生しました。

九州北部

九州北部では、7月10日から雨が強まり、12日昼ごろから災害が発生しました。遠賀川や御笠川、松浦川・六角川などが氾濫し、浸水被害が発生しました。また、東松浦半島や北九州市の住宅地などで土砂災害が発生しました。

四国地方

四国地方では、7月5日に高知県で集中豪雨が発生し、一連の災害の始まりとなりました。土佐山田町（現香美市）では、1時間降水量95.5mm、24時間降水量742mmを記録し、繁藤地区で大規模な土砂災害が発生し、多数の死者・行方不明者が出ました。

中国地方

中国地方では、島根県での記録的な降水量と、中国山地付近での災害が主なものでした。7月9日から断続的に雨が降り続き、11日にピークを迎えました。

島根県

島根県では、江の川などが前年にも洪水被害を受けており、今回の豪雨でさらに被害が拡大しました。県内の主要河川が軒並み氾濫し、広範囲で浸水被害が発生しました。また、宍道湖の堤防が決壊し、周辺地域が長期間浸水しました。この影響で、出雲空港も浸水し、長期間閉鎖されました。浜田市を中心に県西部で降水量が多く、土砂災害も多発しました。

中部地方

中部地方では、愛知県豊田市から岐阜県境付近で特に被害が大きくなりました。7月9日ごろから梅雨前線が停滞し、12日夜半から13日未明にかけて豪雨がピークを迎えました。その後、7月15日以降は台風6号により被害が拡大しました。

愛知・岐阜県境

矢作川流域の小原村（現豊田市）を中心とした地域で局地的な集中豪雨が発生し、洪水や土砂災害が多発しました。猿投山などで山崩れが起こり、麓の民家を襲いました。

関東地方

関東地方では、7月12日の局地的な豪雨により被害が発生しましたが、15日からの台風6号による被害の方が大きかったと記録されています。

丹沢山地

丹沢山地の西丹沢、酒匂川の上流域に集中豪雨が襲い、河内川流域で洪水や土砂流出が発生しました。山崩れも多発しました。

東北地方

東北地方では、秋田県北部米代川流域に集中豪雨が襲いました。米代川中流域の阿仁川・藤琴川に降雨が集中し、流域で堤防が決壊し、浸水被害が発生しました。奥羽本線や国道7号も水没し、交通機関に大きな影響が出ました。

まとめ

昭和47年7月豪雨は、梅雨前線と台風の影響が重なり、日本各地に甚大な被害をもたらした災害でした。この災害の教訓を活かし、今後の防災対策に役立てていく必要があります。

参考資料
気象庁
島根県ホームページ*

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