大林宏 (検察官)

大林宏：日本の検察官、元検事総長の足跡

大林宏（おおばやし ひろし）は、1947年6月17日生まれの日本の検察官、弁護士です。第25代検事総長を務めました。

生い立ちと検察官への道

東京都出身の大林氏は、一橋大学法学部在学中に司法試験に合格という秀才でした。1972年に大学を卒業後、司法修習を経て検事に任官しました。同期には、最高裁判事となった横田尤孝や、大阪高検検事長を務めた中尾巧などがいます。検察官としてのキャリアは38年に及び、そのうち20年間は法務省に勤務していました。しかし、札幌地検や東京地検での捜査検事の経験も持ち、自らを「赤レンガ派」と称されることに違和感を覚えていると述べています。

また、検事として初めて一等書記官として中国大使館に赴任した際には、中国残留日本人の帰国支援や、伊藤律への事情聴取など、重要な役割を担いました。

法務省での活動

2002年から2年間、法務省大臣官房長を務めた際には、名古屋刑務所で発生した刑務官による受刑者暴行死事件の真相解明に尽力しました。過去の死亡記録を洗い直すことで、他の受刑者への虐待の可能性を探り、特捜部検事も動員して徹底的に調査しました。また、監獄法改正や、窃盗罪への罰金刑導入など、法改正にも貢献しました。さらに、三井環事件の処理にも関わっています。

検事総長就任と辞任

2010年、大林氏は検事総長に就任しましたが、直後に大阪地検特捜部主任検事による証拠改ざん事件が発覚し、大きな批判を浴びました。柳田稔法務大臣からリーダーシップを発揮して検察の信頼回復に努めるよう指示を受け、記者会見で国民に謝罪しました。大林氏は、改ざん事件当時東京高検検事長であり、決裁ラインから外れていたため、処分対象とはなりませんでしたが、責任を取る形で辞任を決意しました。これは、検事総長が不祥事で引責辞任するという前例のない事態でした。

後任には、現場派検事の笠間治雄が就任しました。笠間氏は当初固辞していましたが、大林氏の説得により就任を決意しました。この人事は、法務省勤務が長い「赤レンガ派」ではなく、現場をよく知る検事を総長に据えるべきという考えに基づくものでした。

その後

検事総長辞任後は、弁護士として登録し、上林法律事務所に入所しました。また、大和証券、アサツー ディ・ケイ、三菱電機、新日鐵住金、日本たばこ産業、日本製鉄など、多くの企業の監査役や取締役を歴任し、企業経営にも貢献しています。さらに、更生保護法人日本更生保護協会の副理事長も務めるなど、多岐にわたる分野で活躍しています。

人物像

趣味はテニス、散歩、読書で、書店では毎回10冊程度まとめ買いをするほどの読書家です。座右の銘は「苦あれば楽あり、楽あれば苦あり」。部下を「さん」付けで呼ぶなど、親しみやすい人柄で、常に先を見据えて行動すると評されています。鶏肉が苦手という一面もあり、中国大使館勤務時には北京ダックに苦労したというエピソードも残っています。

来歴

1947年6月 - 東京都生まれ
1970年3月 - 一橋大学法学部卒業
1970年 - 最高裁判所司法研修所司法修習生（24期）
1972年4月 - 東京地方検察庁検事に任官
1980年 - 外務省在中華人民共和国日本国[[大使館]]一等書記官
2002年 - 法務省大臣官房長
2006年 - 法務事務次官
2010年6月 - 検事総長
2010年12月 - 検事総長を辞任
2011年3月 - 弁護士登録、上林法律事務所入所
2011年4月 - 大和証券株式会社監査役
2012年3月 - 株式会社アサツー ディ・ケイ取締役
2013年6月 - 三菱電機株式会社取締役
2014年 - 更生保護法人日本更生保護協会副理事長
その他、新日鐵住金株式会社監査役、日本たばこ産業株式会社監査役、日本製鉄株式会社社外取締役を歴任

著作

「新春随想 刑事分野における国際協力」
「巻頭言 裁判員制度広報雑感」
「巻頭言 保護観察の現状と課題」
「ごあいさつ」
「経営刑事法シリーズ--無許可貼付の組合ビラ撤去と監視行為」
* 「経営刑事法シリーズ--恐喝の被害者による利益提供と犯罪」

大林宏は、検察官として、また弁護士、企業役員として、日本の司法、経済界に大きな影響を与えた人物です。

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