大森勝山遺跡

大森勝山遺跡

青森県弘前市に位置する大森勝山遺跡は、岩木山の北東に広がる丘陵地帯にあります。この遺跡は縄文時代晩期初頭の環状列石を主体とする集落跡として知られ、その学術的価値から国の史跡に指定されています。

発見と調査

1957年、岩木山麓の総合開発に伴い、弘前市教育委員会が埋蔵文化財の保存と活用を目的として発掘調査を開始しました。1959年から1961年にかけて行われた6回の調査で、77基の組石からなる楕円形の環状列石と、大型の竪穴建物が発見されました。この環状列石は、縄文時代晩期初頭のものとしては初の事例であり、良好な保存状態とともに大きな注目を集めました。

2006年から2008年にかけての再調査では、環状列石の構築過程が明らかになりました。丘陵全体を平坦に整地した後、円形状に土を盛り、その縁辺部に組石を配置するという手順が判明しました。

構造と特徴

組石には、遺跡近辺で採取された輝石安山岩が使用されています。組石は直径1メートルから3メートルの範囲で集石状に配置されていますが、放射状や環状、方形状に規則的に配置されているものもあります。組石の下には、据え付けるための浅い掘り込みが見られるものもあります。

環状列石の周辺からは、石組炉、埋設土器、土坑、焼土、多数の柱穴が発見されています。丘陵の先端部からは土器捨て場も見つかっており、これらの遺構や遺物は、縄文時代晩期前葉から晩期中葉のものとされています。石鏃、石匙、石斧などの道具類や、土偶、石棒といった呪術具も出土しています。大型竪穴建物以外に竪穴建物や掘立柱建物は確認されていませんが、これらの遺構や遺物から、集落として一定期間の居住があったことが示唆されます。

意義

大森勝山遺跡は、環状列石としては最も新しい縄文時代晩期初頭に属し、構築過程が明らかになった初めての事例です。また、環状列石の周辺で縄文時代晩期初頭から中葉にかけて集落が形成されていたことも判明しました。これらの発見は、従来の環状列石の年代や性格に関する新たな知見をもたらし、北海道南部から東北北部に分布する他の大型環状列石との関係性を解明する上で重要な手がかりとなります。

世界遺産登録

大森勝山遺跡は、2012年に国の史跡に指定され、2021年には「北海道・北東北の縄文遺跡群」の一つとしてユネスコ世界文化遺産に登録されました。この登録は、日本の縄文文化の価値を世界に発信する上で大きな意義を持ちます。

施設

裾野地区体育文化交流センターはガイダンス施設として機能しており、大森勝山遺跡の出土品などが展示されています。遺跡を訪れる際には、ぜひ立ち寄って理解を深めてください。

大森勝山遺跡は、縄文時代の生活や文化を今に伝える貴重な遺跡であり、その保存と研究が今後も重要です。

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