大橋俊雄

大橋俊雄（おおはし しゅんのう）

概要

大橋俊雄は、1925年（大正14年）に神奈川県で生まれ、2001年（平成13年）に76歳で亡くなった日本仏教史学者です。当初は「登志夫」と名乗っていましたが、後に「俊雄」（しゅんのう）に改名しました。大橋は、特に時宗の研究において先駆的な役割を果たし、その業績は日本仏教史の研究に大きな影響を与えました。

生涯

大橋は、真宗大谷派の門徒の家に生まれましたが、後に浄土宗で得度・受戒し、横浜市泉区の西林寺の住職を務めました。教育者としても活躍し、横浜市立高等学校や藤嶺学園藤沢高等学校で教鞭を執りました。また、大正大学の非常勤講師や日本文化研究所の講師も務めました。1992年には、「一遍智真の宗教に関する成立史的研究」で立正大学から文学博士の学位を授与されています。晩年には、浄土宗本山蓮華寺の貫主となりました。2001年、肺癌のため横浜の自宅で亡くなりました。

時宗研究者として

大橋が時宗研究に目覚めたのは、大正大学在学中に、後の遊行72代・藤沢55世（時宗法主）となる寺沼琢明の授業を受けたことがきっかけでした。戦前から時宗に着目していた赤松俊秀とともに、戦後の学界で時宗研究の先鞭をつけたとされています。笠原一男とも親交があり、日本史における時宗研究の意義を広めることに貢献しました。また、「時宗文化研究所」の研究員として、『時衆研究』の編集を引き継ぎ、その発展に尽力しました。

評価

大橋は、時宗が中世には宗派ではなく「時衆」という集団であったという歴史的背景を踏まえつつ、宗派史観から完全に脱却することはできませんでした。しかし、その研究業績は非常に多く、時宗研究におけるパイオニアとしての功績は非常に大きいと言えるでしょう。大橋の研究は、詳細な典拠を省略することがあり、孫引きが多いという指摘もありますが、その概説書は非常に分かりやすく、時宗研究を志す者にとっては必読の書となっています。金井清光によると、大橋は二人の子供を同時に亡くすという悲劇に見舞われながらも、『時衆研究』の刊行を滞りなく続けたそうです。

大橋は、時宗宗門からは、金井清光とともに、他阿一心法主から一度表彰されたのみで、所属する浄土宗からも冷遇されることがありました。しかし、晩年には、浄土宗で講話の小冊子を出版するなど、徐々に認められるようになりました。そのため、後年は、時宗や浄土宗の異流とされた、一向俊聖が開祖である一向派の研究にも力を注ぎました。一向派寺院の親睦団体である八葉会の教学顧問となり、多くの史料集を執筆しました。後年には、一向派の血脈を相承し、本寺であった蓮華寺の貫主に推戴されています。

著作

大橋は、数多くの著作を著しました。

主な著作には、以下のものがあります。

『番場時衆のあゆみ』(1963年)
『法然 その行動と思想』(1970年)
『一遍 その行動と思想』(1971年)
『遊行聖 庶民の佛教史話』(1971年)
『時宗の成立と展開』(1973年)
『踊り念佛』(1974年)
『一遍と時宗教団』(1978年)
『法然と浄土宗教団』(1978年)
『一遍』(1983年)
『中世仏教の基礎知識』(1984年)
『仏教の宇宙』(1986年)
『行誡上人の生涯』(1987年)
『法然入門』(1989年)
『一遍入門』(1991年)
『法然』(1998年)
『一遍聖』(2001年)

また、訳注や編著も多数あります。

これらの著作を通じて、大橋は仏教思想を広く一般に伝え、後進の研究者たちに大きな影響を与えました。

論文

大橋俊雄の論文は、CiNiiやINBUDSで確認することができます。

伝記

大橋俊雄に関する伝記としては、以下のものがあります。

大橋俊雄「時衆研究を志して」（自叙伝・遺稿。『時衆文化 5』、2002年4月号）
金井清光「大橋俊雄氏の人と学問」（同上）
朝日新聞2002年1月15日付訃報記事
『偲び草』（西林寺、2002年2月。追悼遺稿集・略伝）

これらの資料を通して、大橋の人物像や学問に対する情熱を知ることができます。

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