大橋宗桂 (8代)

八代 大橋 宗桂（はちだい おおはし そうけい、1714年 - 1774年）は、江戸時代に活躍した将棋指しであり、当時の将棋界における名門、大橋家の当主でした。彼の生涯は、将棋界の家元としての責任、名人位への挑戦、そして後進の育成に彩られています。

宗桂は元々、伊藤家出身で、幼名を宗寿と名乗っていました。五世名人である二代伊藤宗印の三男として生まれ、兄には伊藤印達、三代伊藤宗看、弟には初代伊藤看寿がいます。九代大橋宗桂は実子にあたります。

大橋家は、宗桂が生まれる前、五代大橋宗桂と六代大橋宗銀を相次いで亡くし、断絶の危機に瀕していました。七代大橋宗桂が急遽跡を継ぎましたが、その棋力は十分とは言えませんでした。そのような状況下で、宗寿は1724年、11歳で大橋家の養子となり、大橋家を継承することになります。同年には御城将棋に初出勤し、当時名人位にあった大橋分家の三代大橋宗与に勝利しました。

その後、七代宗桂の引退を受けて、宗寿が八代大橋宗桂を襲名します。兄の三代宗看が名人となった時代には、大橋家の当主として、大橋分家の四代大橋宗与や、伊藤家の後継者となった弟の初代看寿と名人位を争いましたが、次第に看寿に圧倒されるようになります。

1755年には、御城将棋で兄の宗看と対戦し勝利を収めました。この年、嫡子の印寿（後の九代宗桂）が12歳で初出勤しています。

1760年に弟の看寿、1761年に兄の宗看が相次いで亡くなると、名人位は空位となります。1763年、宗桂は御城将棋で、従来は認められていなかった息子印寿との親子対戦を願い出て、将軍徳川家治の許可を得て実現しました。結果は角落で負け、右香落ちで勝ちというものでした。

1764年に八段に昇段。同年には長く八段を務めた四代大橋宗与が亡くなり、宗桂が名実ともに家元の最高実力者となりました。宗桂は、息子である印寿や、甥の四代得寿の跡を継いで養子に入った五代伊藤宗印、大橋分家を継いだ五代大橋宗順と共に将棋界を支えました。また、1765年には、献上図式の慣行に従い『象戯図式』を開板し、将棋の普及にも貢献しました。

しかし、宗桂は名人位を襲位することなく、1774年に61歳で生涯を閉じました。彼の功績は、大橋家を立て直し、後進を育成し、将棋の発展に寄与したことにあると言えるでしょう。

宗桂の生涯は、将棋界における家元の役割、名人位への挑戦、そして才能ある若手の育成という、多岐にわたる側面を持っています。彼の存在は、江戸時代の将棋界において重要な意味を持っており、その功績は今日においても高く評価されています。

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