大水上神社

大水上神社：歴史と自然が織りなす聖域

香川県三豊市に位置する大水上神社は、悠久の歴史と豊かな自然に抱かれた神社です。古くから地域の人々に崇敬され、讃岐国二宮としてその名を歴史に刻んでいます。延喜式神名帳にも記載されており、その歴史は弥生時代、もしくは古墳時代まで遡るとも伝えられています。

神々との対話：創建から現代まで

創建は、本殿裏にある鰻淵や千五百皇子社背後の磐座を祀る儀式から始まったとされています。中世には、領主である近藤正光が八幡神を勧請し、大水上大明神、八幡大神、三島竜神を祀る「二宮三社」として発展しました。この時代、別当清澄寺と別当神宮寺を有する神仏習合の神社として、近藤家の庇護のもと隆盛を極めました。

空海（弘法大師）も唐への渡航前に当神社を訪れ、三神と問答和歌を詠んだという伝説も残されています。空海の歌と、八幡大神、大水上大明神、三島竜神からの返歌は、今もなお語り継がれる神聖な物語です。

源平合戦の時代には、源氏と平氏、両陣営がそれぞれ願文を奉納したとされ、応永34年（1427年）には、社殿の破損をうけて天皇から造営費の支給を受けたという記録も残されています。戦国時代には長曾我部軍勢による焼失の被害を受けたものの、永禄年間の再建、明治以降の改築を経て、現在の社殿が形作られました。

神々の宿る地：境内と摂末社

大水上神社の境内は、自然豊かな景観に恵まれています。一の鳥居から始まり、睡僊橋を渡ると鬱蒼とした神域が広がり、禊場、注連石、随身門、三の鳥居と、神聖な空間へと導かれます。県指定文化財である時雨燈籠は、その荘厳な姿で参拝者を迎えます。

拝殿・本殿のほか、絵馬堂、矢場、社務所、そして雨乞い神事の遺蹟である鰻淵など、多くの史跡や建造物が点在しています。鰻淵では、雨乞いの際に黒い鰻が現れると雨、白い鰻が現れると日照り、カニが現れると大風が吹くと伝えられています。また、大水上祭祀遺跡の中心となる磐座（夫婦岩）は、古代からの御神体として、今もなお崇敬を集めています。

境内には、千五百皇子社、産霊社、四社宮、豊葉神社、牛神神社、荒魂神社、祓戸社など、多くの摂末社も祀られています。それぞれの神々が、参拝者を守り、導く存在として信仰されています。

大水上渓流谷は、財田川の支流である宮川の渓谷沿いに位置し、昼なお暗い鬱蒼とした森が広がっています。水原秋桜子や山口誓子といった著名な歌人の句碑・歌碑も境内には建立されており、文学的な側面も持ち合わせています。

歴史の証：文化財

大水上神社には、国史跡である二ノ宮窯跡や、県指定有形文化財である時雨燈籠、県指定天然記念物である大水上神社ネズの木など、数多くの文化財が残されています。二ノ宮窯跡からは、平安時代後期から鎌倉時代にかけての瓦、杯、硯などが発掘されており、当時の生活様式を知る上で貴重な史料となっています。

時雨燈籠は、凝灰岩製の灯籠で、その高さは246cmにも及びます。1346年（康永4年）の作とされ、最高位の「法橋」の位の工匠によるものと伝えられています。大水上神社ネズの木は、樹高12m、枝張14m、胸高幹囲4.4mにも及ぶ巨木で、その生命力は、神社の悠久の歴史を感じさせます。

アクセスとその他

国道377号から香川県道218号財田上高瀬線に入り、さぬき豊中ICからも約15分とアクセス良好です。随身門前と一の鳥居前に駐車場が用意されていますが、夜間はイノシシの出没の恐れがあるため、境内への立ち入りが制限されています。御朱印の授与は、土曜日と日曜日、もしくは日曜日だけの午後1時半から4時頃までですが、月によって変更があるので、Facebookページで事前に確認することをお勧めします。年間を通して、大祓式・御神楽や和太鼓集団の野外ライブなど、様々なイベントが開催され、境内は和傘や竹灯りのライトアップで幻想的に彩られます。

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