大洋 (航空機)

十九試陸上哨戒機 大洋

大洋（たいよう）は、日本海軍が太平洋戦争中に計画した対潜哨戒機兼輸送機で、機体番号は「Q2M」とされている。この機体の設計は三菱重工業によって行われ、全木製の構造を持つ夜間哨戒機として1945年の初めに開発が開始された。しかし、終戦によってこの計画は未完に終わることとなった。

開発の経緯

大洋の開発は1942年10月頃から始まった。これは海軍の第一線機を木製化する計画の一環であり、一式陸上攻撃機の全木製化を試みるものであった。この構想は1944年の中頃に具体化され、新たに設計された木製陸攻の開発が進められたが、同年末には陸上爆撃機「銀河」に統一する方針の影響で計画は一時中断された。しかし、1945年に入ると二式飛行艇の生産中止に伴い、一式陸攻を夜間哨戒機として使用することが決定された。

大洋の開発にあたっては、海軍から以下のような要求が出されていた:

• - 対潜哨戒及び輸送機としての運用が可能であること。
• - 夜間の離着陸が可能で、安定性があり、整備や生産が容易であること。
• - 主なエンジンとして三菱「火星二五型」を採用し、高度2,000 mでの巡航速度は170ノット（約314.8 km/h）、航続距離は2,000海里以上が求められた。
• - 必要な武装として、13mm機銃2挺、20mm機関砲1挺、250kg爆弾3発以上、電磁波兵器や電波探信儀も搭載されるべきだった。

量産の開始は1945年の後半を予定していた。試作の発注は1945年1月に行われ、その後、三菱の技術者たちが研究会を開催し、計画の具体化を進めた。しかし、最初のエンジン案である「火星」では求められる性能を満たせないと判断されたため、別案としてより出力の高い三菱「MK9A」エンジンが提案されたが、こちらも却下された。

1945年6月には、機体名が「東山」から「大洋」に変更されたが、8月12日に開かれた木型審査の最中に終戦を迎えてしまい、開発計画は中止されることになった。設計はほぼ完了した段階で、主要部の構造や艤装に関する計画も進んでいた。

設計の特徴

大洋は、低翼の双発機であり、全木製の構造が特徴的であった。重心を後方に配置するために、大面積の水平尾翼と長いモーメントアームを採用した。木製機体であるため、重量増加を簡素化された各部で補う設計がなされていた。また、機内には武装とともに、各種の電子機器も搭載される予定だった。これには三式空六号四型電波探信儀や三式一号磁気探知機、試製二式空七号無線電信機二型（逆探）などが含まれていた。

スペック

大洋の主な仕様は以下の通りである:

• - 全長: 18.75 m
• - 全幅: 25.00 m
• - 全高: 4.75 m
• - 主翼面積: 62.50 m²
• - 自重: 8,850 kg
• - 全備重量: 13,600 kg
• - 発動機: 富士 火星二五型乙 空冷複列星型14気筒（離昇1,840 hp） × 2
• - 最高速度: 491 km/h
• - 巡航速度: 315 km/h
• - 航続距離: 3,700 km
• - 武装: 二式十三粍旋回機銃 × 3, 爆弾1,000 kg, 250kg爆弾 × 4または60kg爆弾 × 12
• - 乗員: 6名

これらの性能データは、当時の推定値に基づいている。

参考文献

• - 野沢正 『日本航空機総集 三菱篇』 出版協同社、1961年、221頁。
• - 野原茂『日本陸海軍試作／計画機 1924〜45』グリーンアロー出版社、1999年、252,253頁。
• - 小川利彦 『日本陸海軍 幻の新鋭機』 戦史刊行会、1976年、73 - 75頁。
• - 松岡久光『みつびし飛行機物語』アテネ書房、1993年、161,162,250-253頁。

関連項目

• - 偵察機・哨戒機の一覧

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