大津雄一

大津雄一

大津雄一（おおつ ゆういち、1954年3月 - ）は、日本文学、とりわけ中世文学を専門とする研究者です。特に軍記物語の研究に深く携わり、長年にわたり早稲田大学で教鞭を執っていました。

略歴

神奈川県出身。1977年に早稲田大学教育学部国語国文学科を卒業後、1998年に同大学大学院文学研究科後期課程を修了しました。1988年より早稲田大学高等学院で教諭として勤務し、1998年に早稲田大学教育学部の専任講師に就任。その後、2000年に助教授、2005年には教授へと昇任しました。

2003年には、「軍記と王権のイデオロギー」と題した論文で早稲田大学から博士（文学）の学位を授与されています。

研究内容

大津雄一氏の研究は、日本中世文学、特に軍記物語に焦点を当てています。軍記物語を単なる歴史的記録としてではなく、当時の社会や政治状況、そして人々の思想や価値観を反映した文学作品として捉え、詳細な分析を行っています。特に、軍記物語に描かれる王権のイデオロギーに着目し、物語がどのように権力者の正当性や支配を強化する役割を果たしていたのかを考察しています。

また、『平家物語』の研究にも力を入れており、物語の成立過程や享受のされ方について、独自の視点から分析を加えています。『平家物語』が単なる物語としてではなく、国民的な叙事詩としてどのように形成され、受容されていったのかを、詳細な文献研究と社会背景の分析を通じて明らかにしようと試みています。

著書

『軍記と王権のイデオロギー』（翰林書房、2005年）
『『平家物語』の再誕　創られた国民叙事詩』（NHKブックス、2013年）

共編著

『声の力と国語教育』（金井景子共編著、学文社・早稲田教育叢書、2007年）
『中世文学の回廊』（小林保治監修、兼築信行、日下力、高津希和子、竹本幹夫、土屋有里子、三田明弘共編、勉誠出版、2008年）
『平家物語大事典』（日下力、佐伯真一、櫻井陽子共編、東京書籍、2010年）

注釈など

『北条五代記』（矢代和夫共著、勉誠出版・日本合戦騒動叢書、1999年）
『新編日本古典文学全集 53　曾我物語』（梶原正昭、野中哲照共校注・訳、小学館、2002年）
湯浅常山原著『戦国武将逸話集 訳注『常山紀談』』（田口寛共訳注、勉誠出版、2010-11年）
* 『平家物語覚一本』（平藤幸共編、武蔵野書院、2013年）

大津雄一氏の研究業績は、日本中世文学研究に大きな貢献をしており、今後の研究の発展が期待されています。

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