大深度地熱温泉

大分市の大深度地熱温泉：地下からの恵み

大分市は、別府温泉や由布院温泉といった有名温泉地を擁する大分県に位置しながら、実は独自の温泉文化を育んできました。その中心にあるのが、「大深度地熱温泉」です。2001年に登録商標となったこの温泉は、大分平野の地下600～800m、場所によっては1000mもの深部から湧出する地下水を活用しています。

大深度地熱温泉の成り立ち

大深度地熱温泉は、火山活動とは無関係な「非火山性温泉」です。別府や湯布院の温泉が火山熱によって温められるのに対し、大深度地熱温泉は、大分川や大野川の下流域に厚く堆積した地層中の深層熱水に由来します。

数百万年前から続く地質学的変化が、この温泉の形成に深く関わっています。かつてこの地域は淡水湖であったり、火山活動の影響を受けたり、海になったりと、複雑な地史を辿ってきました。これらの過程で、多様な堆積層が形成され、それが現在の温泉貯留層となっています。

温泉の熱源は、地下深くの堆積層に含まれる古代植物の腐食による発熱です。この腐食過程で、二酸化炭素やメタンなどの炭化水素が発生し、同時にフミン酸などの腐食酸が生成されます。これらの物質が熱水に溶け込むことで、モール泉特有の黄褐色や黒褐色の色合いと、独特の甘い香りが生まれるのです。地中温度は深度100mにつき5～6.5℃上昇するため、地下700～800mの深部では50℃前後の温水が得られます。

多様な泉質と特徴

大深度地熱温泉は、その泉質の多様性も特徴です。海水由来の塩分濃度の高い塩化物泉や炭酸水素塩泉、植物由来成分に富む単純温泉など、場所によって異なる泉質が楽しめます。温泉の色も、腐食酸の量や酸化鉄の含有量によって、淡い黄色から濃い褐色まで様々です。

大深度地熱温泉の多くはモール泉に分類されます。モール泉とは、腐植土壌中の有機物が分解して生じる腐植物質を多く含む温泉のことです。大深度地熱温泉の場合、この有機物が数万年かけて石油になる一歩手前の状態であるため、「あと数万年で石油になっていたかもしれない」と言われることもあります。

天然ガスとの関連

大深度地熱温泉には、メタンなどの天然ガスが含まれる場合があり、温泉の利用にあたっては天然ガスへの対策が不可欠です。2005年には、法改正前であったことから、掘削現場での発火事故が発生したという歴史もあります。

大分市内の主な大深度地熱温泉

大分市内には、金池温泉、丹生温泉、王子温泉（大分市内で最古の温泉）、あたみ温泉、明野アサヒ温泉、高田温泉など、多くの施設があります。JR大分駅直結のホテル内にも大深度地熱温泉を利用したスパがあり、アクセスも良好です。

まとめ

大深度地熱温泉は、大分市の地質学的歴史と最新の技術が融合した、独特の魅力を持つ温泉です。地下深くから湧き上がる、非火山性モール泉の独特の湯を、ぜひ体験してみてください。

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