炭酸水素塩泉

炭酸水素塩泉：その特徴と効能、そして禁忌

炭酸水素塩泉は、温泉を分類する際に用いられる泉質の一つです。温泉水1kg中に含まれる成分（水以外の成分）が1000mg以上あり、そのうち炭酸水素ナトリウム（NaHCO₃）が340mgを超える温泉を指します。

炭酸水素塩泉の性質

この泉質名は、温泉水に炭酸水素イオン（HCO₃⁻）が多く含まれ、分析すると炭酸水素塩が主成分として検出されることに由来します。炭酸水素ナトリウムは水に溶けると弱アルカリ性を示すため、炭酸水素塩泉も多くの場合、弱アルカリ性のpHを示します。

多様な顔を持つ炭酸水素塩泉

炭酸水素塩泉は、その特性から様々な温泉に分類されます。例えば、「美人の湯」として知られる温泉の中には、炭酸水素塩泉に分類されるものがあり、これは弱アルカリ性の性質による美肌効果が期待できるためです（ただし、これは炭酸水素塩泉特有の効果ではありません）。また、黒褐色の湯である「黒湯」にも炭酸水素塩泉が含まれている場合が多く見られます。さらに、有馬[[温泉]]（兵庫県）や長湯温泉（大分県）のように、炭酸ガスを多く含む炭酸水素塩泉もあり、「炭酸泉」と呼ばれることもあります。

掲示用泉質名として「炭酸水素塩泉」と表示される場合だけでなく、他の泉質名と併記される場合もあります。例えば、「塩化物泉」であっても、「ナトリウム－塩化物・炭酸水素塩泉」と表示されることがあり、これはかつて「含重曹食塩泉」と呼ばれていた温泉を反映したものです。「含鉄泉」であっても、「含鉄（Ⅱ）－ナトリウム－炭酸水素塩泉」のように表示される場合があり、これはかつて「重曹炭酸鉄泉」などと呼ばれていた温泉を反映したものです。

効能と禁忌

炭酸水素塩泉には様々な効能が期待できますが、それは個々の体質や症状によって異なります。以下に代表的な効能と禁忌をまとめます。

効能（浴用）

一般的な温泉効果に加え、切り傷、火傷、慢性の皮膚病などに効果が期待されます。

効能（飲用）

痛風、慢性消化器病、肝臓病、糖尿病などに効果が期待されます。

禁忌（浴用）

温泉の一般的な禁忌症（心臓疾患、呼吸器疾患など）に該当する場合は入浴を控えるべきです。

禁忌（飲用）

腎臓病、心疾患などにより体液の摂取制限がある場合、飲用は控えるべきです。また、甲状腺機能亢進症の場合、ヨウ素を含む温泉水の飲用は禁忌です。高血圧症の場合、ナトリウムを多く含む温泉水の飲用は控えることが望ましいです。

美肌効果

炭酸水素塩泉の美肌効果は、弱アルカリ性のpHによるものです。弱アルカリ性の温泉に入浴すると、肌がぬるぬるするのは、皮脂が鹸化し、石鹸のような物質が肌に作られるためです。さらに、強いアルカリ性の温泉では、表皮のタンパク質が溶解することも、この感触の原因となります。古い角質層が溶解・除去されることで、肌が滑らかになる効果が期待でき、「美肌効果」「美人の湯」などと呼ばれます。ただし、モール泉のように植物由来の有機物を多く含む温泉でも、同様のつるつる感を得られる場合があることに注意が必要です。

関連用語

黒湯
モール泉
* 二酸化炭素泉（純粋な炭酸含有泉）

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