大発見

東京事変、集大成のアルバム『大発見』

2011年6月29日、東京事変は5枚目のオリジナルアルバム『大発見』をリリースしました。前作『スポーツ』から約1年4ヶ月ぶりの新作であり、バンドの活動における重要な転換点となった作品です。

アルバムコンセプトと楽曲制作

アルバムタイトル『大発見』は、椎名林檎の発案によるもの。バンドのこれまでの活動を総括し、完結という意識をもって制作された本作は、各メンバーの個性が融合した、いわば東京事変の集大成と言えるでしょう。

今作では、“スタンダード”、“プリミティブ”、“バック・トゥ・ルーツ”といった要素を内包した、多様な音楽性が展開されています。椎名林檎は、アルバム全体を“大いなる発見”というテーマで統一することを目指しました。そのため、タイアップ曲を除けば楽曲提供は少なく、他のメンバーの楽曲制作への参加を重視した制作体制をとっています。

刄田綴色以外の4人のメンバー（椎名林檎、浮雲、伊澤一葉、亀田誠治）が作曲に携わり、5曲は共作となっています。メンバー全員がそれぞれの才能を注ぎ込んだ結果、自然と共作が多くなったと言えるでしょう。どの楽曲も個々のメンバーの個性が前面に出ることはなく、バンド全体の統一感、共作感を感じさせる仕上がりとなっています。メンバー自身も「曲を提出したら、自分の手から離れ、バンドのものになる」「クレジット上は誰かと誰かという表記になっていても、すべての曲に事変全員としての共作感がある」と語っています。

サウンド面では、ポップス、ビートパンク、グラムロック、ジャズ、シャンソン、アフロビート、ブルースロック、ビッグバンドなど、実に多彩な音楽性が融合。楽曲タイトルは、サブタイトルを除けば、すべて全角7文字で統一されています。初回生産分には、特別なスリーブケースが付属しました。

制作過程とメンバーの役割

アルバム制作期間は2010年10月から2011年5月まで。30曲近くの候補曲の中から収録曲が選定され、プリプロダクションを経てレコーディングが行われました。しかし、2011年2月に起きた刄田綴色の不祥事によるバンド活動休止、そして3月の東日本大震災の影響で、制作は一時中断を余儀なくされました。

今作では、Pro Toolsを使用し、曲の断片をすべて記録するという、それまでの東京事変の制作方法とは異なるアプローチが取られました。これにより、メンバー全員が楽曲全体のイメージを共有し、緻密なサウンドメイキングが可能になったと言えるでしょう。

各メンバーの役割にも注目です。椎名林檎は、全体を俯瞰し、バンドの舵取りに専念。伊澤一葉は多くの楽曲を持ち込み、椎名と亀田との共作を含む7曲に参加。亀田誠治は制作意欲が高く、5曲もの候補曲を提示しました。浮雲は楽曲提供こそ少なかったものの、ギタープレイで大きく貢献。刄田綴色は、それまでの姿勢を改め、亀田誠治との協働によって、従来の東京事変にはないリズム隊によるグルーブを生み出しています。

楽曲解説

アルバムには、配信限定シングル「天国へようこそ」「ドーパミント!」のアルバムバージョンを含む全14曲が収録されています。各曲は、メンバーの個性が光るだけでなく、それぞれの楽曲に込められた想いや制作過程のエピソードも興味深く、多様な音楽性を堪能できる作品となっています。例えば、「電気のない都市」は東日本大震災を意識した作品であることなどが、楽曲解説からも伺えます。

『大発見』は、東京事変の音楽的探求、メンバー間の化学反応、そして時代背景が複雑に絡み合った、唯一無二の作品と言えるでしょう。

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