大相撲令和3年5月場所

大相撲令和3年五月場所

令和3年（2021年）5月9日から23日までの15日間、東京都墨田区にある両国国技館にて、大相撲五月場所が開催されました。新型コロナウイルス感染症（COVID-19）のパンデミックが続く中、本場所は先場所の三月場所に引き続き、入場者数の制限を設けての実施となりました。これにより、令和2年七月場所以降、東京での連続開催は6場所目となります。

場所開催に向けて、いくつかの動きがありました。まず、3月31日に行われた夏場所の番付編成会議では、王鵬と大翔鵬の二人が再び十両へと昇進することが決定しました。4月20日からは国技館での合同稽古が始まり、力士たちは場所に向けて調整を進めました。4月26日に番付が発表されましたが、同日には政府による緊急事態宣言の発令がありました。当初は宣言解除日の5月11日までは無観客とし、解除されれば翌日から有観客とする予定でしたが、宣言が5月31日まで延長されたため、一旦は千秋楽まで無観客が継続される運びとなりました。しかし、その後政府の大規模イベントに関する入場制限が一部緩和されたことを受け、本場所は4日目以降を有観客にて行うことになりました。

力士の休場も相次ぎました。場所前には横綱・白鵬が6場所連続となる休場を発表。場所中も西前頭3枚目の千代の国（5月12日から）、東前頭13枚目の明瀬山（5月16日から）、そして大関の朝乃山（5月20日から）が相次いで休場を届け出ました。

優勝争いの展開

今場所の優勝争いは、後半戦に入って白熱した展開を見せました。中日を終えた時点では、大関昇進を目指す関脇・照ノ富士が全勝、これを大関・貴景勝が1敗で追う形でした。

9日目、照ノ富士は幕内復帰後連敗を喫していた髙安に勝利し全勝を維持。一方、貴景勝は大栄翔に敗れて2敗に後退し、照ノ富士が星二つの差をつけて単独トップに立ちました。しかし、11日目には照ノ富士が妙義龍戦で髷掴みの反則負けを喫し、1敗に。これにより、1敗の照ノ富士を、2敗となった貴景勝と、平幕ながら健闘する東前頭5枚目の遠藤が追う展開となりました。

12日目には、優勝争いに絡んでいた遠藤が琴恵光に敗れて3敗に後退。照ノ富士と貴景勝の2強対決の様相が深まります。13日目、照ノ富士は逸ノ城を破り1敗を守りましたが、貴景勝は遠藤に敗れてまさかの3敗目。再び照ノ富士が後続に星二つの差をつけ、優勝へ大きく近づきました。

迎えた14日目、照ノ富士と遠藤の直接対決が組まれました。この一番に勝てば照ノ富士の優勝が決まる状況でしたが、立ち合いから遠藤の猛攻に押し込まれ、下手投げで敗れて2敗に後退。貴景勝が勝利し3敗を維持したため、優勝の行方は千秋楽までもつれ込むことになりました。

千秋楽の結び前には、3敗の遠藤が大関・正代と対戦しましたが敗れて4敗となり、優勝争いから脱落。結びの一番は、2敗の照ノ富士と3敗の貴景勝という直接対決となりました。もし貴景勝が勝てば、両者が2敗で並び、優勝決定戦にもつれ込むことになります。熱戦の末、貴景勝が照ノ富士を破り、両者2敗で並び優勝決定戦へ。決定戦では、照ノ富士が貴景勝を突き落としで破り、逆転での劇的な優勝を決めました。

照ノ富士の快挙と三賞

今場所を制した照ノ富士は、先場所の三月場所に続く2場所連続、自身4度目の幕内最高優勝となりました。大関が2場所連続で優勝するのは、平成30年（2018年）春場所・夏場所の鶴竜以来のことです。さらに、関脇と大関での連続優勝という快挙は、戦前の大横綱双葉山以来という歴史的な記録となりました。また、大関としては初めての優勝であり、来場所は綱取りに挑むことになります。

三賞については、おっつけが評価された若隆景が2場所連続で技能賞を受賞しました。また、終盤まで優勝争いを盛り上げ、14日目には照ノ富士を破る殊勲の星を挙げた遠藤も技能賞に選ばれました。殊勲賞は優勝を逃したため該当者がなく、敢闘賞も該当なし。結果として三賞受賞者が技能賞の二名のみとなり、これは平成25年（2013年）五月場所以来の珍しい状況となりました。

コロナ禍という特殊な状況下ながら、照ノ富士の復活優勝と歴史的記録、そして終盤の劇的な優勝争いにより、記憶に残る五月場所となりました。

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