大石信清

大石信清：赤穂浪士の知られざる生涯

大石信清（おおいし のぶきよ、1677年-1703年）は、江戸時代前期に活躍した赤穂藩士であり、赤穂浪士四十七士の一人として知られています。幼名は八三郎。はじめ源蔵、のちに瀬左衛門と通称を変えています。

信清は、赤穂藩浅野氏家臣である大石信澄の次男として誕生しました。母は近衛家家臣の妹でした。兄には大石信興（のち信豊）がいます。家系をたどると、大石良雄の曽祖父の弟の子孫にあたる、大石家の分家出身でした。

元禄2年（1689年）、父が亡くなると、兄と共に家督を相続し、馬廻役として赤穂藩に仕えました。禄高は150石でした。元禄13年頃には、通称を源蔵から瀬左衛門へと改名しています。また、剣術の達人としても知られ、大石良雄と共に奥村無我に師事し、東軍流剣術を学んでいました。

元禄14年（1701年）、主君浅野長矩が吉良義央に刃傷に及んだ際には、参勤交代の供として江戸にいました。事件後、原元辰と共に赤穂へと急ぎました。赤穂城開城後は、兄と共に奈良や京都で過ごしていましたが、元禄15年（1702年）の大石良雄による神文返しの後、兄と義絶しました。その後、母方の姓を用い「小田権六」と名を変え、江戸で生活を始めました。しかし、生活は苦しく、伯父に借金をするなど経済的に困窮していた様子が書簡からうかがえます。

吉良邸討ち入りでは、裏門隊に加わりました。討ち入り後、熊本藩細川家に預けられました。預かりの身でありながら、細川屋敷では、狂言踊りの真似事をしたり、世話役を酔わせて騒いだりしていたという逸話も残されています。

そして、元禄16年（1703年）2月4日、細川家家臣の介錯により切腹しました。享年27歳でした。主君浅野長矩と同じ高輪泉岳寺に葬られ、法名は刃寛徳剣信士とされました。

信清には妻も子供もいませんでしたが、津軽大石家の大石良麿の子、良饒が養子となり、瀬左衛門家の家系は途絶えることなく現在まで続いています。広島藩で絶家となった大三郎の家とは異なり、信清の家系は大石宗家として赤穂での祭祀を今もなお引き継いでいます。

信清の遺品は、切腹前に伯父である大石無人へ預けられており、現在は大石神社に納められています。これらの遺品、特に書簡は、兄である大石信興との関係を示す貴重な一次資料となっています。また、所持していた刀は、泉岳寺の住職による売却で散逸してしまいました。

大石信清は、派手な活躍は少ないものの、赤穂浪士の一員として忠義を貫き、その生涯は、時代を背景とした悲劇と、家系の存続という希望を同時に示しています。彼が残した書簡は、浪士たちの心情や、当時の社会情勢を理解する上で貴重な資料として、現代においても注目を集めています。彼の波乱に満ちた人生は、今もなお多くの人々の心に深く刻まれています。

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