原元辰

原元辰：赤穂浪士の知略と忠義

原元辰（はら もととき、1648年-1703年）は、江戸時代前期に活躍した武士であり、赤穂浪士四十七士の一人として知られています。通称は惣右衛門、変名には和田元真や前田善蔵などを使用しました。

生い立ちと赤穂藩への仕官

米沢藩主上杉綱勝の家臣をへて、大聖寺藩主前田利治の家臣を務めた原定辰を父に持ちます。母は和田将監（小笠原家家臣）の娘でした。弟には和田喜六（母方の和田家を継承）と、同じく赤穂浪士となる岡島常樹がいます。父は不始末により前田家を辞し浪人となりましたが、元辰は延宝3年（1675年）、赤穂藩主・浅野長直に仕官、後に弟の常樹も赤穂藩に仕えました。延宝7年（1679年）には赤穂藩士の娘と結婚し、1男4女をもうけましたが、妻は元禄5年（1692年）に双生児出産で亡くなっています。その後、水野七郎右衛門（姫路藩本多家家臣）の娘を後妻に迎えました。元禄10年（1697年）には300石取り足軽頭に昇進しました。

浅野家への忠義と赤穂事件

元禄14年（1701年）、浅野長矩が吉良義央に刃傷に及んだ事件では、伝奏屋敷に詰めていた元辰は、屋敷からの退去指揮や浅野家の什器類の搬出を的確に処理し、幕府の目付を感心させました。その後、大石信清とともに急ぎ赤穂へ知らせを伝え、浅野長矩の切腹の報を届けました。

赤穂城明け渡し後は大坂に住まい、大石良雄の再興運動を補佐しました。仇討ちを主張する急進派をまとめるため、江戸や京都へ赴き、大石良雄を説得、仇討ち実行を迫ったと伝えられています。元禄15年（1702年）7月、浅野長矩の弟・浅野長広の処分が決まり、再興の望みが絶たれると、大石はついに仇討ちを決意し、元辰は岡島常樹らと共に江戸へ向かいました。

吉良邸討ち入りと最期

元禄15年12月14日、吉良邸討ち入りでは表門隊に属し、大石良雄を補佐して指揮を執りました。討ち入り後、負傷したため駕籠で泉岳寺へ運ばれました。細川綱利屋敷へ預けられた際には、寺坂吉右衛門が討ち入り時に逃亡したと証言しています。元禄16年（1703年）2月4日、幕府の命により切腹しました。享年56。泉岳寺に埋葬され、法名は刃峰毛劔信士です。

子孫と遺品

長男の儀左衛門道善は討ち入りに反対し、父と義絶。漢方医となり、「原了郭」を創業しました。養子の兵太夫も反対し、養子縁組は解消されました。次男は連座を避けるため出家しましたが、後に還俗し広島藩浅野家に召抱えられました。原元辰の墓は、昭和20年（1945年）の原爆投下で消失しました。

元辰の遺品である刀や書状などは散逸し、一部は行方不明となっています。近年、元辰が使用した可能性のある脇差が発見され、赤穂大石神社での公開が予定されています。

創作と史実

元辰を説得するために老母が自害したという話は後世の創作です。史実では、母は討ち入りに反対する弟・和田喜六を頼り、元辰のもとを離れていました。

原元辰は、赤穂浪士の中でも知略と決断力に優れた人物として、赤穂事件において重要な役割を果たしたと言えるでしょう。彼の生涯は、忠義と葛藤、そして時代の波に翻弄された武士の姿を鮮やかに描き出しています。

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