大砲とスタンプ

大砲とスタンプ

『大砲とスタンプ』は、速水螺旋人による日本の漫画作品で、『月刊モーニングtwo』にて連載されました。この作品は、架空の国家「大公国」を舞台に、長期化する戦争の裏側で、補給や輸送を担う「兵站軍」の日常を描いた物語です。

あらすじ

物語の中心となるのは、兵站軍に所属する人々です。彼らは、他の兵士たちから「紙の兵隊」と揶揄される、デスクワーク中心の部隊に所属しています。主人公のマルチナ・M・マヤコフスカヤは、兵站軍少尉としてアゲゾコ要塞の補給廠に配属されます。彼女は、戦争によって荒廃した占領地での任務を通じて、軍隊の腐敗や占領地の住民との関わりなど、様々な問題に直面します。当初は理想に燃えていたマルチナですが、次第に「戦争の現実」を目の当たりにし、軍人として、そして人間として成長していきます。

物語は、アゲゾコ要塞を舞台に、兵站軍の日常と、彼らが直面する様々な事件を描きます。レジスタンス活動、軍内部の腐敗、重要人物の護衛など、一見地味な兵站軍の任務を通して、戦争の残酷さや人間の葛藤が浮き彫りにされます。やがて、長引く戦争に疲弊した大公国で革命が勃発。帝国軍によるアゲゾコの制圧という事態を受け、マルチナたちは最後の戦いに挑むことになります。

登場人物

マルチナ・M・マヤコフスカヤ: 主人公。生真面目な性格で、官僚主義的な面もありますが、次第に柔軟な対応を身につけていきます。アゲゾコの兵站軍任務に不可欠な存在として成長します。
スタンプ: アゲゾコへ輸送する医薬品にまぎれ込んでいたイタチモドキ。なぜかマルチナになついており、ペットとして飼われることになりました。
キリール・K・キリュシキン: 兵站軍大尉。普段はいい加減ですが、交渉力と洞察力に優れています。文才もあり、ファンタスチカ作家としても活動しています。
ボリスラフ・B・ボイコ: 兵站軍曹長。元陸軍の古強者で、豪胆かつ沈着な性格です。マルチナを補佐し、部隊をまとめます。
マクシム・M・マンチコフ: 兵站軍軍曹。元民間企業の事務屋で、世渡り上手な面があります。インサイダー取引で蓄財していますが、失敗も多いです。
アーネチカ・A・アルセニエワ: 兵站軍兵長。スラム出身で、荒事に強く、サバイバル能力に長けています。マルチナを信頼し、彼女の無防備さを心配しています。
コースチャ・K・キリュシキン: 兵站軍少尉。キリールの異母弟で、軍人貴族的な思考回路の持ち主です。武勲を立てることに執念を燃やしています。
ザミャーチン: 兵站軍軍曹。元陸軍で、共和国軍の攻勢を生き延びた経験を持ちます。マルチナを信頼しています。
リューバ: 兵站軍軍曹。マルチナ赴任当初から第二中隊に在籍している丸顔の若い女性兵士です。
トイチロヴスキイ: 兵站軍兵長。左目を前髪で隠した男性兵士。金庫開けが得意です。
エロフェーエフ: 兵站軍少佐。常に酔っぱらっている第二中隊長です。
ドラガン・D・ドプチンスキイ: 兵站軍兵卒。元映画館の館主で、マルチナの幼馴染みです。
ガブリエラ・ラドワンスカ: 帝国軍大佐。アゲゾコ駐留帝国軍司令部参謀長を務める高級将校です。
「抵抗運動家」: 本名不明の共和国人。アゲゾコ占領軍への抵抗運動を行う地下組織の幹部です。

作品の特徴

『大砲とスタンプ』は、戦争を背景にしながらも、一般兵士の日常生活や人間関係を丁寧に描いています。大規模な戦闘シーンよりも、それを支える兵站軍の活動に焦点を当てている点が特徴です。また、一話ごとに登場する兵器の紹介ページも、作品の魅力を引き立てています。作者の速水螺旋人は、緻密な世界観と魅力的なキャラクターを通じて、戦争の様々な側面を描き出しています。

長引く戦争、革命、占領、そして撤退という激動の時代を、兵站軍の視点から描いた『大砲とスタンプ』は、戦争の現実と人間の強さを考えさせられる作品です。

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