大築邦雄は、
1911年12月14日に
東京市小石川区(現在の
東京都文京区)で生まれ、
1991年10月25日に生涯を閉じました。彼は日本の
作曲家として知られ、その作品は多岐にわたります。
彼の家系は文化的背景が豊かで、父は麹町女学校の創立者であり、祖父は
陸軍中将という名門でした。このような環境の中で、彼は
音楽への関心を深め、独自の
音楽性を開花させていきました。
旧制東京高等学校在学中から作曲活動を始め、1935年には「管絃楽のためのトッカータ」で第4回
音楽コンクールに入選を果たしました。さらに、1936年には
宮内省雅楽部が募集した
雅楽を基にした管弦楽曲のコンクールで「舞(ダンス・ラント)」が入選するなど、若くしてその才能を高く評価されました。
その後、京都帝国大学文学部に進学し、1940年に卒業しました。在学中の1937年には、管弦楽曲「行列」でワインガルトナー賞の2等に入選するなど、
作曲家としての地位を確立しました。大学卒業後は大学院に進み、
音楽理論史や日本
音楽の研究に没頭しました。この時期の研究は、彼の作品に深い理論的背景と日本的な要素をもたらすこととなりました。
1951年からは
横浜国立大学で
音楽理論を教鞭を執り、後進の育成にも力を注ぎました。教育者としてもその才能を発揮し、多くの学生に影響を与えました。1968年以降は、
広島平和記念式典で開式から原爆死没者名簿奉納の際に演奏される「前奏曲(慰霊の曲)」を作曲し、その作品は式典において重要な役割を果たしています。この楽曲は、彼の平和への願いと、
音楽を通じた慰霊の思いが込められています。
大築邦雄は、その生涯を通じて、管弦楽曲、
雅楽を基にした作品、そして平和を祈る楽曲など、幅広いジャンルの作品を世に送り出しました。彼の作品は、日本の
音楽史において重要な位置を占めています。
参考文献
* 富樫康『日本の
作曲家』pp.98-102(
音楽之友社、1956年)