大芬村

大芬村の魅力と成り立ち

大芬村（だいふん）は中国の深圳市に位置する地域で、特に油絵の複製品を手がけることで広く知られています。この村は、国内外に向けた油絵の卸売市場として機能しており、世界市場における複製画の6割を占めることから「大芬油絵村」とも称されています。この珍しい村の背景には、多くの歴史と文化が息づいています。

経済と歴史の背景

1980年代末、大芬村は香港の画商であった黄江によって設立されました。彼は、元々香港で複製画の製造と販売を行っていたものの、コスト高騰に直面したため、最終的にこの地域へ職人たちと共に移転しました。移転当初、村の人口は約200人に過ぎませんでしたが、現在（2013年時点）では、美術工芸の関係で10,000人以上の住民がいます。元々は農村だったこのエリアも、近年の深圳の都市化現象により、田畑は姿を消し、都市部の中心地へと変貌を遂げました。

絵画市場の成長

1990年代を通じて、中国経済が急成長し、絵画の需要が高まる中で、大芬村の複製画は飛躍的な販売増加を見せました。当時の作品は、正確なコピーに特化しており、数人の職人が協力して出来上がる流れ作業で大量生産が行われました。特に、ゴッホの出身地であるオランダへ向けた販売が重要であり、多くの土産物店には大芬村で作られたゴッホの複製品が展示され、観光客に人気を博しています。

著作権とその影響

しかし、近代画家の作品の著作権が切れていない場合、複製が国際的な問題に発展することもあります。それにも関わらず、これらの問題が逆に特定の画家によるオリジナル作品の創作を促進し、地域の成長につながってきました。現在では、地元当局が著作権の侵害や贋作の防止に努め、複製画にオリジナルのサインを入れることを禁止するなどの取り組みが行われています。さらに、コストの安い地域に複製画産業が移転する可能性もあるため、オリジナル作品の大量生産に向けた試みも進められています。

アートの登竜門

大芬村は、画家を目指す人々にとっての登竜門ともなっています。村内の絵描きは、複製画のみを手がけている場合「画工」と呼称され、正式な「画家」として認められるためには、深圳市の公募展で3度入選する必要があります。深圳市は画家を支援する政策を採用しており、正式な画家になれば、村内の専用居住区に、周辺の賃料よりも1/3の価格で住むことができる特典が与えられます。

アクセスとメディア

大芬村へは深圳地下鉄の竜崗線を利用し、大芬駅で下車することでアクセスできます。また、2007年にはテレビ東京の番組「日経スペシャル ガイアの夜明け」で、中国の複製画の実態が取材されるなど、多くのメディアに取り上げられてきました。これにより、改めて大芬村の重要性とユニークさが広く知られることとなったのです。

このように、大芬村は中国のアート文化の重要な一部を担う地域となり、今後もさらなる発展が期待されています。

もう一度検索