大藤ゆき

大藤 ゆきの生涯と業績

大藤 ゆき（おおとう ゆき、1910年3月11日 - 2001年11月1日）は、日本の民俗学者であり、歌人です。彼女は、女性民俗学者のパイオニアとされ、同じく民俗学者の夫、大藤時彦と共に民俗学の研究に貢献しました。彼女の出身は福岡県で、初めは朝鮮の咸興市で生まれ育ちましたが、父の転勤によって福岡県に移住しました。父は元福岡市長であり、小西家に生まれました。

幼少期と教育

大藤は父の仕事の関係で中国の大連にも住んでいましたが、若い頃に福岡に戻り、東京女子大学高等学部を卒業。卒業後はなかなか就職先が見つからず、英文タイプや速記などの資格を取得し、外国人に日本語を教授する仕事を行っていました。彼女が民俗学の道に進むきっかけとなったのは、1935年に柳田国男を訪ねたことです。そこで、民俗学の重要性に気付き、柳田の秘書として研究活動を始めました。

民俗学者としての道

大藤は民俗学の研究を進める中で、1937年には母子愛育会に勤務し、そこでの経験が彼女の研究テーマに大きな影響を与えました。特に「児やらい」と呼ばれる概念は、出産や子育てに関する調査を通じて明確化され、生涯にわたる研究の中心になりました。28歳で大藤時彦と結婚し、一時は家庭に専念するものの、家事や育児の中で新たな視点から民俗学を考察し、処女作『児やらひ』を執筆しました。この作品は女性の視点からの民俗学研究に新たな道を開いたものとして、高く評価されています。

戦後の活躍

戦中は鳥取県に疎開し、戦後は鎌倉に帰還。地域活動に積極的に参加し、民俗学のテーマを探求し続けました。1952年からは東京の「女の会」に参加し、女性民俗学の研究をリードする存在になり、講演や執筆活動を精力的に行いました。1961年には『神奈川県の歴史 県下の民俗編 上』の執筆に携わり、さらに1968年には『神奈川県民俗調査』を通じて地域の調査活動を行いました。

晩年と影響

1985年からは女性民俗学研究会の代表を務め、様々な組織でも活動を行いました。2001年に91歳で亡くなるまで、彼女は多くの著作を残し、その中には『鎌倉の民俗』『子どもの四季』『子どもの民俗学』などが含まれます。また、歌人としても評価され、短歌集『五月の朝』などが知られています。彼女の提唱した「複眼の教育」や地域子育てグループ「鎌倉てらこや」は、現在でも多くの人々に影響を与えています。大藤 ゆきの業績は、民俗学の分野で新たな視点を提供し、後世に語り継がれるべきものとなっています。

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