咸興市

咸興市（ハムフンし）

咸興市は、朝鮮民主主義人民共和国の咸鏡南道に位置する道都です。李氏朝鮮発祥の地として知られ、歴史的に重要な都市です。平壌と並び、冷麺の本場としても有名で、特に咸興冷麺は広く知られています。

地理

咸興市は、日本海に面した咸興平野に位置しています。市内には城川江が流れ、北部の蓋馬高原への交通の要所となっています。この地理的条件から、農産物の集散地としても重要な役割を果たしており、咸興湾に面した興南には大きな港があります。

行政区画

咸興市は、1区域、99洞、2労働者区、19里を管轄しています。特筆すべきは、金正日が「苦難の行軍」期に訪れた「咸興市青年ヤギ牧場」にちなんで名付けられた来日労働者区が、咸州郡、栄光郡、平安南道大興郡に囲まれた飛地として存在している点です。

歴史

古代には高句麗の領域であり、その後、渤海国の領域となりました。渤海国の五京の一つである南京南海府の比定地の一つともされています。渤海国滅亡後は、女真族の支配下となり、高麗やモンゴル帝国との間で争奪戦が繰り広げられました。最終的には高麗の支配下に入り、1356年に咸州が置かれました。

李氏朝鮮の建国者である李成桂は、晩年をこの地で隠居したため、彼にまつわる遺跡が多く残っています。李氏朝鮮時代には、咸興は東北辺境部の中心地として重要でした。咸鏡道という名称の「咸」は、この咸州に由来しています。

日本統治時代には、1920年代から蓋馬高原で電源開発が進められ、咸興中心部の南約10kmの海岸にある興南に工業地帯が建設されました。朝鮮戦争中には、咸興と興南は国連軍の艦砲射撃や空爆により大きな被害を受けましたが、後にソ連や東ドイツなどの東側諸国の援助により復興し、発展を遂げました。咸興市は、1960年から1967年の間、直轄市に昇格したこともあります。

年表

1258年：モンゴルの双城総管府に属し、哈蘭府が置かれる。
1356年：高麗によって咸州が置かれる。
1369年：咸州牧に昇格。
1416年：咸興府となり、咸吉道観察使営が置かれる。
1470年：李施愛の乱により咸興郡に降格、観察使営も永興に移される。
1509年：咸興府に復し、再び観察使営が置かれる。咸鏡道となる。
1895年：咸興府咸興郡となる（二十三府制）。
1896年：咸鏡南道に所属する咸興府となり、観察使庁が置かれる。
1910年：咸興郡に改編される。
1914年：咸鏡南道咸興郡の一部が新設の新興郡に分割。洪原郡の一部が咸興郡に編入。
1927年：日窒コンツェルンが朝鮮窒素肥料株式会社と朝鮮水力電気株式会社を設立。
1930年：咸興郡咸興面および南州東面の一部が合併し、咸興府が発足。
1933年：咸州郡北州東面の一部を編入。
1939年：咸州郡北州東面・州北面の各一部を編入。
1941年：咸州郡州西面・雲南面・東川面の各一部を編入。
1943年：咸州郡東川面の一部を編入。
1945年：咸興府が咸興市に改称。
1949年：咸州郡東川面の一部を編入。
1952年：郡面里統廃合により、咸鏡南道咸興市を設置。39区27里が成立。
1953年：区を洞に統合。25洞15里。
1954年：一部の里が咸州郡に編入。
1955年：一部の里が洞に昇格。29洞7里。
1957年：洞の分割・合併が行われる。33洞7里。
1960年：咸興直轄市として再編。(9区域)
1970年：咸興直轄市が廃止。咸鏡南道咸興市となる。(7区域)
1974年：一部区域の統合・編入。(6区域)
1977年：盤龍区域が東興山区域に改称。
1990年：城川区域が城川江区域に、龍城区域が海岸区域に改称。
1995年：沙浦区域の一部を分離し、興徳区域を設置。(7区域)
2001年：興南区域・興徳区域・海岸区域および沙浦区域の一部地域をもって、咸鏡南道興南市を新設。
2005年：興南市が再び咸興市に編入され、咸興市興南区域となる。

行政

咸興市の下位行政区分として、興南区域があります。興南区域は、港湾部に位置する化学[[工業]]地帯であり、かつては興南市として独立していました。また、過去には複数の区域が存在していましたが、現在は統合されています。

交通

咸興市は、鉄道網が発達しており、清津方面に通じる平羅線や、蓋馬高原方面への路線が利用可能です。主要な駅としては、咸興駅、興南駅などがあります。また、平壌や清津への定期便が発着する徳山飛行場も存在します。

産業

咸興市は、日本統治時代に形成された電力・港湾・工場などの基盤の上に、重工業が発展しています。特に化学[[工業]]が盛んで、合成繊維（ビナロン）や化学肥料などの生産が中心です。

教育

咸興市内には、咸興大学をはじめとする複数の大学が存在します。

観光

咸興市には、東興山をはじめとする景勝地や、李成桂が晩年に過ごした咸興本宮などの史跡があります。また、麻田遊園地は海水浴場として知られています。文化施設としては、咸興大劇場などがあります。

出身者

咸興市出身の著名人としては、安寿吉、楊亨燮、キム・オクチュなどが挙げられます。

参考文献

中央日報北韓ネット・北韓地名辞典
* ウィキメディア・コモンズには、咸興市に関するカテゴリがあります。

もう一度検索