大西広

大西広の経歴と研究業績

大西広（おおにし ひろし）は、日本の著名な経済学者で、1956年7月31日に京都府相楽郡で生まれました。彼は、東大寺学園中学・高校を経て、1980年に京都大学経済学部を卒業、その後1985年に京都大学経済学研究科の博士後期課程を修了しました。博士論文のテーマは「社会統計学における数量モデル研究と統計的認識論」であり、同年に立命館大学経済学部の助教授に就任しました。

1991年には京都大学大学院経済学研究科の助教授、その後教授へと昇進し、多岐にわたる役職を歴任しました。特に注目すべきは、2012年から2022年にかけて慶應義塾大学経済学部の教授を務め、その後名誉教授に就任したことです。大西は、経済理論学会や日本現代中国学会などの多くの学会で理事や幹事として活動しました。

研究の主な内容と主張

大西の研究は、マルクス経済学と近代経済学、さらに統計学にまたがる内容であり、特に彼のスタンスは社会主義や資本主義に関して独自の視点を持っています。彼は旧ソ連や中国の「社会主義」を国家資本主義の一形態であるとし、新自由主義をも共産主義の延長線上に位置づけています。これは、彼が持つ徹底した歴史的唯物論の見解から来ており、マーガレット・サッチャーを尊敬する一方で、マルクス主義者という位置づけを自らに与えています。

また、資本主義が歴史的な経済段階の一つであるのに対し、社会主義は政治体制や経済システムなどが曖昧であると指摘し、明確な定義を求めています。大西は、「資本主義以前の『社会主義』」及び「資本主義後の社会主義」という著作を通じてその考えを展開しています。

資本の蓄積と社会的厚生の視点

彼の考えでは、産業革命以降に資本が登場し、その蓄積過程の中で消費部門への支出が抑制される現象が見られます。初期の資本主義では労働者に対する厳しい資本管理が目立ちますが、時間が経つにつれて、資本蓄積が進むことで生産部門への投資が減少し、消費部門への振り分けが進むと主張しています。これにより、社会全体における厚生が向上すると彼は考えています。

大西の思想には新古典派経済学からの影響が色濃く見られ、従来のマルクス経済学を新たに改良したモデルを提示しています。また、彼は六四天安門事件における中国政府の対応を評価する発言をする一方で、鄧小平の政策に対して賛辞を呈しています。これには賛否が分かれるところですが、彼の見解は多くの人々に議論をもたらしています。

著書

大西は数多くの著作を執筆しており、代表的な著書には『マルクス経済学』や『中国に主張すべきは何か』などが存在します。これらの作品を通じて、彼の独特な視点と深い洞察が広く伝えられています。特に彼の著書『資本主義以前の「社会主義」と資本主義後の社会主義』では、社会主義と資本主義の関係性について新たな地平を切り開く試みがなされています。

大西広の経済学に対するアプローチや思想は、現在の経済状況の理解において非常に重要な役割を果たしており、今後も注目され続けることでしょう。

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