大西洋奴隷貿易

大西洋奴隷貿易：人道に対する罪と、その終焉への道

15世紀から19世紀にかけて、大西洋を舞台に、アフリカの人々を商品とする悲惨な人身売買が行われました。これが大西洋奴隷貿易です。西アフリカから連行された人々は、劣悪な環境下の船旅（ミドル・パッセージ）を経て新大陸へと送られました。この貿易は、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ大陸を結ぶ三角貿易という経済システムの一部として機能していました。

奴隷供給：根底にある暴力と搾取

奴隷の多くは戦争捕虜、村襲撃の犠牲者、誘拐された人々でした。債務の返済や罰として、アフリカ人自身を売買することもありました。捕らえられた人々は、手かせでつながれ、内陸から海岸まで何週間、時には何ヶ月もかけて強制的に連行されました。海岸に到着した奴隷は、ヨーロッパの商人らによって購入されるまで、砦に閉じ込められ、非人道的な扱いを受け続けました。歴史学の推計によると、新大陸に送られたアフリカ人は1200万人から1300万人にも上ると言われています。ダホメ王国のように、自国の軍事力強化のために奴隷貿易に関与した勢力もあったことが知られており、その複雑な背景も理解する必要があります。ダホメ王ゲゾは、武器獲得のため奴隷貿易を容認したと語っています。

三角貿易：世界経済を歪めた悲劇

アフリカ人奴隷の輸送は、大西洋を挟んだ各地域の経済を結びつける重要な要素でした。ヨーロッパ諸国、特にイギリス、フランス、オランダ、スペイン、ポルトガルなどは、この貿易の中心的な役割を果たしました。新大陸では、鉱山やプランテーションでの大量の労働力が必要とされており、アフリカ人奴隷はその需要を満たすために輸入されました。アフリカ人やアフリカ系アメリカ人の学者の中には、この悲劇をスワヒリ語で「破局」を意味する「Maafa」と呼ぶ者もいます。

奴隷貿易への反対運動と終焉

18世紀に入ると、イギリスやアメリカ合衆国を中心に、奴隷貿易に反対する声が次第に高まりました。福音派のウィリアム・ウィルバーフォースやクエーカー教徒などの宗教的少数派、独立自営農民などが、その中心人物でした。1772年には、奴隷がイギリス領内にいる限り自由身分となる判決が出されました。19世紀にはアボリショニズム運動が盛んになり、1792年にデンマークが奴隷貿易禁止を決定したのを皮切りに、イギリスは1807年に「奴隷貿易法」を制定し、奴隷貿易を禁止しました。イギリス海軍は「アフリカ封鎖」作戦を行い、奴隷船の往来を妨害しました。しかし、スペインの植民地であるプエルトリコやキューバでは、奴隷貿易は19世紀後半まで続きました。奴隷貿易の完全な終焉は、長い闘争の末にようやく訪れたのです。アボリショニズム運動の成果は、現代社会にとっても重要な教訓となっています。

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