ダホメ王国

ダホメ王国：奴隷貿易とアマゾンで知られた西アフリカの軍事国家

現在ベナン共和国に位置するダホメ王国は、17世紀から19世紀まで存在した西アフリカの王国です。奴隷貿易を経済基盤としつつ、独自の強大な軍事力と中央集権的な政治体制を築き上げたことで知られています。その歴史と社会構造、そして滅亡までの過程を見ていきましょう。

王国の成立と発展

ダホメ王国の起源は、アジャ人の一群が内陸のフォン人の領域に移住し、支配を確立したことに遡ります。1650年頃、ウェグバジャがアジャ人の領域の王を宣言し、アグボメ（現アボメイ）を都として、中央集権的な国家建設に着手しました。王権は絶対的なものであり、王は土地と資源を掌握し、収穫物からの徴税を行っていました。しかし、王国の経済の柱は奴隷貿易でした。

初期のダホメ王国は、沿岸部のヨーロッパ人奴隷商人との関係を構築することで繁栄しました。特にアガジャ王（在位1708年-1732年）の時代には、王国の発祥の地であるアラダを征服し、ヨーロッパとの直接交易を拡大しました。ライバルであったオヨ王国との紛争もありましたが、ダホメ王国は独立を維持しつつ、奴隷貿易と、後に導入されたアブラヤシ農園からのパーム油の輸出によって経済力を強化しました。ウィダ（Ouidah）は重要な交易港として機能し、奴隷貿易の中心地となりました。

ゲゾ王と最盛期、そして衰退

1818年に即位したゲゾ王の治世は、ダホメ王国にとって最盛期でした。ゲゾ王は常備軍を整備し、奴隷狩りを拡大することで軍事力を強化しました。同時に、アブラヤシ農園の拡大を通じて、奴隷貿易に頼らない経済基盤の構築にも取り組んでいましたが、イギリスによる奴隷制廃止要求や国内の保守派の抵抗により、奴隷貿易を完全に廃止することはできませんでした。

しかし、奴隷貿易への国際的な圧力、周辺諸国からの抵抗、そしてイギリスやフランスといったヨーロッパ列強の進出により、ダホメ王国の勢力は衰え始めます。

フランスによる征服と滅亡

1890年から1894年にかけて、フランスとの間で戦争が勃発し、最終的にダホメ王国はフランスに征服されました。この戦争においても、多くのアフリカ人兵士がフランス軍に加わっていました。ヨルバ人などのアフリカ諸民族のダホメ王国に対する敵対心も、王国の滅亡の一因として考えられています。1900年、最後の王アゴリ・アグボが廃位され、ダホメ王国は完全に滅亡しました。その後、この地域はフランス領西アフリカの一部となり、その後、ダホメ共和国、ベナン人民共和国を経て、現在のベナン共和国となりました。

ダホメ王国の社会構造と独特の制度

ダホメ王国は、専制君主制を敷いた中央集権国家でした。王位継承は嫡子によって行われ、王は即位時に新たな名を名乗りました。初期には王権に制限がありましたが、奴隷貿易と戦争を通じて王権は強大になり、恐怖政治によって統治されました。

特に有名なのが、女性兵士「アマゾン」と呼ばれる軍隊です。男性が戦闘で減少したことで女性の社会的地位が向上し、王の娘ハングベの時代から組織されたとされています。この女性兵士の存在は、ダホメ王国の軍事力の象徴として知られています。

ダホメ王国の官僚制は、男女のペアで職務を行う双分制を特徴としていました。無文字社会でありながら、小石や貝殻を用いた独自の統計や会計制度を確立し、人口や家畜などの統計を管理していました。通貨にはタカラガイの貝貨が用いられ、市場経済が形成されていました。山形浩生は、ダホメ王国の経済体制を社会主義経済に例える見解を示しています。

現代におけるダホメ王国

ダホメ王国は滅亡しましたが、アゴリ・アグボの子孫は現在も王家の祭祀を継続しています。近年は、王位継承をめぐる問題も発生しており、ダホメ王国の歴史と文化は現代社会においても重要な意味を持ち続けています。 ダホメ王国の歴史は、奴隷貿易という暗い側面と、独自の社会構造と軍事力という特異な側面を併せ持った複雑なものです。その歴史を理解することは、アフリカの歴史を理解する上で不可欠です。

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