大谷桂三

初代大谷桂三は、昭和25年（1950年）6月11日、東京銀座で生まれた歌舞伎役者です。新派の春本泰男を父、女流清元節の清元延はる寿を母に持ち、六代目尾上松助を兄に持つ芸能一家に育ちました。

5歳にして新橋演舞場『雨乞妻』で初舞台を飾り、その後二代目尾上松緑の部屋子となります。昭和34年（1959年）2月には初代尾上松也を襲名。十一代目市川團十郎襲名披露「鏡獅子」では、現在の市川團蔵と共に胡蝶を舞うなど、名子役として活躍しました。

昭和39年（1964年）には十四代目守田勘彌に芸養子入りし、四代目坂東志うかを襲名。19歳で名題昇進試験に歴代最高得点を記録し合格するなど、順風満帆な経歴を歩みます。しかし、その後病に倒れ、昭和48年（1973年）、御園座「女暫」紅梅姫で、大谷桂三と改名し独立しました。

病気療養のため一時舞台を離れましたが、平成6年（1994年）、14年ぶりに歌舞伎に復帰。歌舞伎の伝承に力を注ぎ、養生期間から慶應義塾大学歌舞伎研究会講師を務め、復帰後も25年間指導にあたり、後進の育成に貢献しました。平成20年（2008年）には、チャールズ3世（当時皇太子）・カミラ夫妻来日の際には、学生による歌舞伎披露の演出を支えるなど、国際交流にも貢献しています。

平成29年（2017年）4月には、歌舞伎座『娘道成寺』で長男・公春が初代大谷龍生を名乗り初舞台を踏みました。

初代大谷桂三は、子役時代からの輝かしい経歴、病気療養からの復帰、そして後進の育成と、歌舞伎界に多大な貢献を果たした人物です。その功績は、歌舞伎界のみならず、広く日本の伝統芸能文化の発展に繋がるものと言えるでしょう。現在もなお、歌舞伎役者として活躍し、日本の伝統芸能文化の継承に尽力しています。彼の今後の活躍にも期待がかかります。

彼のキャリアは、才能、努力、そして困難を乗り越える不屈の精神の物語です。歌舞伎界における彼の存在は、伝統と革新の調和、そして未来への希望を示す象徴と言えるでしょう。 幼少期からの厳しい修練、病気との闘い、そして歌舞伎への揺るぎない情熱。これら全てが、現在の初代大谷桂三を形作っているのです。

もう一度検索