名題

名題とは

名題（なだい）は、歌舞伎に特有の語彙であり、主に二つの意味を持っています。一つ目は演目の題名を指し、二つ目は歌舞伎役者の格付けを表現する用語です。

演目の題名

歌舞伎において、演目の正式な題名は、当初は江戸では「名題」として知られ、上方では「外題（げだい）」と呼ばれていました。しかし、時が経つにつれて、江戸でも「外題」という表現が一般的になり、「名題」という用語は次第に使われなくなっていきました。この変遷は、歌舞伎の文化が変わる中での言語的な影響を示しています。

役者の格付け

かつて、上方の劇場入口にはその日の演目を紹介する名題看板が掲げられていました。これは現在の公演予告ポスターに相当し、各演目の代表的な場面が描かれ、その脇に演目名が芝居文字で書かれていました。また、看板にはその日出演する主な役者の名前や定紋が記載され、名題看板に載る役者は名題役者（なだいやくしゃ）や看板役者（かんばんやくしゃ）と呼ばれ、これがその役者の地位を示す重要な証拠となりました。

江戸後期の百科事典『守貞謾稿』には、「名代看板」との表現があります。この看板は、上に演目のイラストが描かれ、下に外題が書かれ、三都市すべてでこの看板に名を連ねることが役者の名誉であると説明されています。

その当時、役者の世界は厳格な徒弟制度に依存しており、特に江戸時代は階級制度が非常に重視されました。このため「名題」という言葉は、座頭（ざがしら）に次ぐ役者の階級を示すものとなりました。名題以外の役者には、相中（あいちゅう）、中通り（ちゅうどおり）、下立役（したたちやく）、人足（台詞のない役者）などの階級が存在しました。

幕末から明治にかけて、役者の階級は再編成され、以下のようになりました：

• - 名題下（なだいした）
• - 相中上分（あいちゅうかみぶん）
• - 相中
• - 新相中（しんあいちゅう）

名題以外の役者たちは、部屋割りによって一つの大きな部屋に集められ、地位の低い俳優を「大部屋俳優」と呼ぶようになりました。この習慣は、歌舞伎以外のジャンルにも残っています。江戸の劇場で大部屋は三階に配置されることが多かったため、こうした役者たちは「三階さん」とも称されました。大部屋から名題役者へと昇進した例は、初代中村仲蔵のような極めて少数に限られていました。

現在、歌舞伎役者は名題と名題下の二つに大別されているものの、その昇進基準や手続きは昔に比べて非常に複雑化しています。基本的には以下のステップを経る必要があります：
1. 日本俳優協会が実施する「名題資格審査」の試験に合格する
2. 「名題適任証」を取得する
3. 先輩や贔屓筋、興行主などの賛同を得る
4. 名題昇進披露を行う

歌舞伎役者の世界は独自のルールや慣習が多く存在し、名題の取得は名誉だけでなく、役者としての生涯にわたる道のりとなっています。

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