大谷砂留

大谷砂留の概要

大谷砂留（おおたにすなどめ）は、広島県福山市の芦田町上有地から下有地にかけて位置する砂防堰堤群です。江戸時代に築かれたこの砂留は、大規模なものが7基存在し、総数は300基前後が発見されていると言われています。特に大谷砂留は、同じく福山市にある別所砂留とも近接しており、歴史的価値が高い遺構として注目されています。

背景

砂留は土砂の流出を防ぐために設けられた堰堤で、多くは石積で造られています。備後地方は降水量が比較的少ないものの、中生代の花崗岩からなる山々が脆弱で、長雨の際には土石流を伴った豪雨災害が発生していました。そのため、江戸時代中期には福山藩がこの地域の土砂災害を防ぐために、砂留の設置を始めました。

当時、山の資源に対する需要が高まり、無計画な伐採が行われていたため、山々は禿山となり、治水対策が急務でした。福山藩は1600年代半ばから積極的にこの砂留の建設を推進し、1738年から1885年にかけて、福山市を中心に多数の砂留が築造されました。

歴史

大谷砂留が初めて文書に登場したのは、福山藩の記録によるもので、1730年には神原家が管理していたことが示されています。その後、明治時代に作成された地図にも大谷砂留が記載され、数回の調査により7基の砂留が確認されました。1960年代に入ると、集中豪雨による災害が発生し、その対策としてコンクリート製の砂防ダムの設置や植林事業が行われました。

2016年からは、地元住民の手によって本格的な探索が始まり、過去の文献を基にいくつかの砂留が再発見されました。2020年から2021年にかけての調査では、新たに195基の砂留が追加で確認され、合計で202基となり、福山市最大規模の砂留群として認識されるようになりました。

特色

調査に参加した専門家からは、築造時の形が残っているところが評価されています。また、別所砂留と比較して、より急峻な地形に合わせて造られているため、構造的にも特徴があります。特に6番砂留やその周辺には古いため池の遺構も残っています。

地理

大谷砂留は堀町川東谷に多く存在し、周囲は国有林や共有林に囲まれています。この地域へは舗装された道や林道を通ってアクセスすることができ、登山道も整備されています。特に、1番から6番までの砂留の周辺には多数の小型の砂留も確認でき、今後もさらなる発見が期待されます。

計画されている整備

地方住民の活動によって、大谷砂留の整備や周辺の散策路の設置が進められています。2018年には新たに整備された登山道があらわれ、案内板も設置されています。今後は散策路や広場の整備も視野に入れた計画が進められる予定です。

結論

大谷砂留群は福山市において、過去の土木技術と自然の共生を示す貴重な遺産であり、今後もその保存・活用が求められています。地域の文化や歴史を学ぶ上でも注目すべき場所となるでしょう。

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