砂防

砂防（SABO）とは

砂防とは、地震や火山噴火、豪雨などの自然現象や人為的な活動によって荒廃した山地を復元し、土砂災害から人々の生活や国土を守るための活動です。具体的には、土砂の流出を防ぐ砂防堰堤（砂防ダム）や渓流保全工、山腹工などの対策工事を行います。また、森林の造成や維持も重要な役割を果たします。

砂防事業

砂防事業とは、土砂災害を防止するための調査、計画、工種・工法、施工技術など、あらゆる対策の総称です。砂防法に基づき、土砂の生産を抑制し、流出する土砂を調整することを目的としています。具体的には、荒廃した山地には山腹工、渓流や河川には砂防堰堤、その下流には渓流保全工や遊砂地などを設置します。一方、森林法に基づく治山事業は、水源涵養や土砂流出防止のために森林の造成や維持を行います。

砂防という言葉の由来

「砂防」という言葉は、明治初期の1871年に政府が出した条文「土砂ノ溢漏ヲ防グ可キ事」に由来するとされています。江戸時代には土砂留という土砂流出防止工事がありましたが、砂防は、単なる工事だけでなく、法体系や生活を含めた概念として、明治時代に定着しました。

また、国際的には、1951年にアメリカの技術者ウォルター・C・ローダーミルクが日本の砂防事業を視察した際、「SABO」という言葉を国際共通語にすることを提唱し、その後の国際会議で広く採用されました。

砂防の歴史

江戸時代

日本の山林保護思想は7世紀から9世紀の文献にも見られますが、行政による明確な保護政策は1[[7世紀]]の江戸時代から始まりました。

1666年：「諸国山川掟」が発布され、土砂流出防止のための規制が全国で定められました。
1704年：福山藩が「山方取締の令」を発布し、砂留工事を開始。現存する最古の砂防堰堤「福山藩の砂留」が築造されました。

明治時代

1873年：「淀川水源防砂法」が制定されました。
1873年：オランダ人技師ヨハニス・デ・レーケが来日し、砂防事業の重要性を説きました。
1889年：内務省技師田辺義三郎が「オランダ堰堤」や「鎧堰堤」を設計しました。
1897年：「砂防法」が制定され、土砂流出を抑制するための法整備が進みました。
1901年：東京帝国大学に「理水及び砂防工学専攻」が開設されました。
1905年：オーストリア人アメリゴ・ホフマンが来日し、治山事業に貢献しました。

大正時代

1912年：諸戸北郎が東京帝国大学の教官に就任し、「土石流」という用語を初めて使用しました。
1914年：池田円男が「牛伏川フランス式階段工」を設計しました。
1915年：日本初のセメントを使用した「芦安堰堤」が施工されました。
1925年：赤木正雄が全国の砂防行政を担当し、日本の砂防計画論を確立しました。

昭和時代

1932年：政府が時局匡救砂防事業を拡大し、全国で補助砂防事業が展開されました。
1950年：枕崎台風で荒廃した宮島に「紅葉谷川庭園砂防施設」が竣工しました。
1958年：「地すべり等防止法」が制定されました。
1961年：「災害対策基本法」が制定されました。
1969年：「急傾斜地法」が制定されました。

平成時代

1995年：阪神・淡路大震災を機に砂防ボランティア組織が全国に設立されました。
2000年：「土砂災害防止法」が制定されました。
2002年：インタープリベント2002が長野県松本市で開催されました。
2008年：緊急災害対策派遣隊（テックフォース）が設立されました。
2014年：インタープリベント2014が奈良県奈良市で開催されました。
2016年：SABOカード（砂防カード）が発行されました。
2018年：インタープリベント2018が富山県富山市で開催されました。

令和時代

2023年：「宅地造成及び特定盛土等規制法」（盛土規制法）が施行されました。

砂防関連法規と組織

砂防四法

土砂災害対策に関する法律として、「砂防法」、「地すべり等防止法」、「急傾斜地法」、「土砂災害防止法」の4つがあり、これらを「砂防四法」と呼びます。

砂防に関する組織

砂防行政は、国土交通省砂防部が担当し、地方には北海道開発局と8つの地方整備局が置かれています。各都道府県にも砂防担当課が設置され、市町村と連携して対策工事などを行っています。

砂防に関する研究機関

土砂移動現象や対策技術に関する研究は、国土交通省国土技術政策総合研究所、独立[[行政法人]]土木研究所などの研究機関や、多くの大学で行われています。

海外の砂防

砂防技術協力

国際協力機構（JICA）を通じて、多くの国に砂防技術の専門家が派遣されています。また、短期専門家による技術支援も行われています。

国際会議等

日本は、インタープリベントなどの国際会議に参加し、土砂災害防止に関する国際的な連携を推進しています。

砂防に関する博物館・資料館

日本各地には、砂防に関する以下の博物館・資料館があります。

十勝岳火山砂防情報センター
譲原防災センター
立山カルデラ砂防博物館
白山砂防科学館
奥飛騨さぼう塾（神通砂防資料館）
さぼう遊学館
水のめぐみアクア琵琶
和歌山県土砂災害啓発センター
砂防の父 赤木正雄展示館
雲仙岳災害記念館（がまだすドーム）
大野木場監視所(愛称:大野木場砂防みらい館)
桜島国際火山砂防センター
砂防図書館

脚注

参考文献

池谷浩『砂防入門』山海堂、1974年。
『砂防百年史年表』建設省河川局砂防部砂防課、1979年。
「日本の砂防」編集員委員会 編『日本の砂防』全国治水砂防協会、1990年。
幸田文『崩れ』講談社、1991年。
青木奈緒『動くとき、動くもの』講談社、2002年。
池谷浩『歴史上の人物を通してみた日本砂防史』全国治水砂防協会、2008年。
全国治水砂防協会 編『砂防関係法令例規集平成28年版』全国治水砂防協会、2016年。
『砂防白書（土砂災害防止）令和5年度版』全国治水砂防協会、2024年。
『砂防便覧令和4年版』全国治水砂防協会、2023年。

関連項目

治山
治水
赤木正雄
池谷浩
全国治水砂防協会
砂防会館
ヨハニス・デ・レーケ
諸戸北郎
蒲孚
砂防学会
立山カルデラ砂防博物館
SABOカード - 砂防施設の広報カード

外部リンク

国土交通省砂防部
一般社団法人全国治水砂防協会
公益社団法人砂防学会
一般財団法人砂防・地すべり技術センター
一般財団法人砂防フロンティア整備推進機構
一般社団法人斜面防災対策技術協会
NPO法人土砂災害防止広報センター
砂防関連機関リンク集 - 砂防図書館
SABO(砂防)カード展示リスト - 砂防図書館

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