大越亨

大越亨について

大越亨（おおごし とおる）は、1844年に陸奥国宇多郡中村（現在の福島県相馬市中村）で、相馬中村藩士の家に生まれました。幼名は慎八郎と称しました。幕末の動乱期には、尊王の志を抱き、戊辰戦争では東北地方で単独で尊王を説き、東征大総督府参謀の先鋒軍使を務めるなど、その活躍は目覚ましいものがありました。

明治維新後の活躍

明治維新後、大越は新政府に出仕し、明治3年4月には中村藩の権少参事軍事局事務取扱に就任、その後、同藩の大属となりました。廃藩置県後の明治5年3月には、十一等出仕となり、新治県権大属を皮切りに、茨城県、石川県、徳島県、熊本県、山梨県など各地で地方官を歴任しました。内務省でも要職を歴任し、その行政手腕を発揮しました。

1890年10月には長崎県書記官に就任し、翌1891年6月には滋賀県知事に任命されました。

滋賀県知事として

滋賀県知事としての大越は、県政の発展に尽力しました。特に、瀬田川の浚渫工事は、大阪府からの反対を押し切って着工を強行し、自らも陣頭に立って指揮を執りました。この工事は、琵琶湖の水位調整や治水に大きな効果をもたらしましたが、その一方で、大越自身の体調を大きく損なう結果となりました。

また、県庁を大津から彦根に移転しようとする県会の決定を覆したことで、県会との対立が激化し、内務大臣による県会解散という事態を招きました。

死去とその後

1896年1月、大越は激務と病のため、在任中にこの世を去りました。享年51歳でした。

しかし、彼の功績は決して忘れられることはなく、特に瀬田川浚渫工事における貢献は高く評価され、1905年には石山寺境内に記念碑が建立されました。この記念碑は、大越の不屈の精神と、地域社会への貢献を今に伝えるものです。

栄典

大越の功績を称え、生前には以下の位階と勲章が授与されています。

位階
1891年（明治24年）6月25日 - 従四位
1896年（明治29年）1月10日 - 正四位
勲章
1889年（明治22年）12月27日 - 勲六等瑞宝章
1892年（明治25年）6月29日 - 勲五等瑞宝章
1893年（明治26年）12月28日 - 勲四等瑞宝章

参考文献

歴代知事編纂会編『新編日本の歴代知事』歴代知事編纂会、1991年。
秦郁彦編『日本官僚制総合事典：1868 - 2000』東京大学出版会、2001年。
大植四郎編『明治過去帳』新訂初版、東京美術、1971年（原著私家版1935年）。
大岡力『地方長官人物評』長島為一郎、1892年。
竹林征三、今井範雄「琵琶湖の歴史洪水と瀬田川浚渫についての土木史的研究」『土木史研究』第15号、土木学会、1995年、409-423頁。

大越亨は、激動の時代を生き抜き、その不屈の精神と卓越した行政手腕によって、日本の近代化に大きく貢献した人物と言えるでしょう。

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