大野寺

大野寺の魅力と歴史

大野寺（おおのでら）は、奈良県宇陀市の室生大野にそびえ立つ真言宗室生寺派の寺院です。この寺院は、楊柳山という山号を持ち、本尊には弥勒菩薩が祀られています。伝えられるところによれば、開基は役小角（役行者）とされ、この地は修験道の霊跡としても知られています。

大野寺は宇陀川の美しい景色が広がる場所に位置し、近鉄室生口大野駅から室生寺へ向かう際の入口ともなっています。ここには自然岩に刻まれた彌勒磨崖仏があり、特に春には見事な枝垂桜が咲き誇るため、多くの観光客が訪れる名所です。

歴史的背景

大野寺の創建は白鳳9年（681年）に遡るといわれ、役小角によって始められたと伝承されています。その後、天長元年（824年）には、弘法大師空海が堂宇を建立し、「慈尊院弥勒寺」とも称されました。役小角は修験道の開祖とされ、彼に関する伝説が多く存在しますが、空海が堂を建立したという話は、創建に際して宗祖に仮託されたものとして考えられています。そのため、創建の正確な歴史はあいまいな部分が残っています。

近くにある室生寺は興福寺系（法相宗）の寺院によって創建され、整備されてきたため、大野寺も興福寺と深い関係にあったと考えられています。対岸に位置する弥勒磨崖仏は、興福寺の僧・雅縁の発願により、承元元年（1207年）から制作が始まり、3年後には後鳥羽上皇の臨席のもとで開眼供養が行われたことが記録されています。

しかし、1900年（明治33年）には不幸にも大火災に見舞われ、寺院は全焼してしまいました。その際、本尊や他の仏像は持ち出されましたが、現在残っている建物はすべて修復されたものです。

大野寺の境内と文化財

大野寺の境内には、本堂があり、そこには本尊の木造弥勒菩薩立像が安置されています。この立像は秘仏として知られ、一般には拝観できない貴重な存在です。また、地蔵堂も併設されており、訪れる人々に静かな安らぎを提供しています。

この寺院には、国の重要文化財に指定されている木造地蔵菩薩立像もあります。この像は鎌倉時代に制作されたもので、「身代わり地蔵」として知られています。この呼称は、無実の娘を火あぶりの刑から救ったという伝説によるものです。

さらに、大野寺には国の史跡に指定された大野寺石仏があります。これは宇陀川の対岸に位置する約30メートルの大岩壁に刻まれたもので、光背形に掘り込まれた11.5メートルの弥勒仏立像を線刻で表現しています。制作は承元元年に始まり、3年後に開眼供養が行われたことが記録されています。彌勒磨崖仏の作者は、宋から来日した石工・伊行末の一派であると考えられています。石仏は地下水の影響を受けて剥落の危険があるため、1993年から1999年にかけて保存修理工事が行われました。

アクセス

大野寺には近鉄大阪線の室生口大野駅から徒歩わずか5分とアクセスも良好。自然と歴史が融合したこの地を訪れ、悠久の時を感じるひとときを楽しんでみてはいかがでしょうか。

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