白鳳

白鳳（はくほう）とは

白鳳とは、日本の歴史において、寺社の縁起や地方の地誌、歴史書などに散見される私年号（逸年号とも呼ばれ、『日本書紀』には記載されていない元号）の一つです。一般的には、白雉（650年〜654年）の別名、あるいは美称として認識されています（坂本太郎などの説）。

しかし、この解釈には異説も存在します。『二中歴』や九州年号などでは、白鳳は661年から683年までの期間を指すとされ、中世以降の寺社縁起などでは、672年から685年までの期間を指すものもあります。このように、白鳳がどの期間を指すのかについては、複数の説が存在しているのが現状です。

白鳳の由来

白鳳という名称の由来については、中国の文献にヒントがあるとされています。梁の劉勰（りゅうきょう）が著した『文心雕龍（ぶんしんちょうりゅう）』の「知音篇」には、「麒麟と麏（きび）、鳳凰と雉は全く異なるものである」という記述があります。この記述を踏まえ、「白雉」を「白鳳」と言い換えたのではないかという説があります。これは、白雉よりも上位に位置する鳳凰という存在を持ち出すことで、より美しく、また、より縁起の良いものとして捉えようとした可能性があります。

また、孝徳天皇の改元の詔では、めでたい鳥獣として「鳳凰・騏驎・白雉・白烏」が挙げられており、鳳凰が白雉よりも上位に位置づけられています。このことも、白雉を白鳳と呼び換える動機になったと考えられます。さらに、唐の高宗の元号である儀鳳（676年～679年）や、その名で呼ばれる儀鳳暦が後に日本で使用されたことも、白鳳という名称の普及に影響を与えた可能性も指摘されています。

白鳳期におきた主な出来事

白鳳の期間には、以下の様な出来事が起こっています。

661年：斉明天皇が朝倉宮で崩御。
663年：白村江の戦いで、倭国（日本）が唐・新羅連合軍に大敗。
664年：対馬、壱岐、筑紫に防人が設置され、筑紫に水城が築かれる。
665年：筑紫、長門に城が築かれる。
666年：百済人二千人が東国に移される。
667年：近江遷都。
668年：天智天皇が即位し、近江令が発令。
669年：藤原鎌足が死去。
671年：唐の副将郭務悰が兵2000人を率いて来日、捕虜兵1400人を返還。「筑紫君薩夜麻」が唐から帰国。天智天皇が近江宮で崩御。
672年：壬申の乱が発生。弘文天皇が自害。
673年：天武天皇が即位。
679年：筑紫で地震が発生。
683年：銀銭の使用が停止され、銅銭の使用が命じられる。
684年：日本最古のハレー彗星出現の記録が残る。八色の姓が制定。白鳳地震（南海トラフ巨大地震と推定）が発生。

これらの出来事は、当時の政治、社会、文化に大きな影響を与えました。

白鳳文化

白鳳時代には、仏教文化が花開き、寺院建築や仏像彫刻などの分野で優れた作品が数多く生まれました。これらの文化は、後の時代の文化にも大きな影響を与え、日本文化の基盤を形成したと言えるでしょう。白鳳文化については、別の項目で詳しく解説します。

西暦との対照表

白鳳の期間については、資料によって異なる解釈があるため、西暦との正確な対照は難しいのが現状です。以下に、『二中歴』『海東諸国紀』などに基づく説と、『麗気記私抄』などに基づく説をそれぞれ示します。

『二中歴』『海東諸国紀』など: 661年～683年
『麗気記私抄』など: 672年～685年

関連項目

白鳳文化
『二中歴』
『海東諸国紀』
『麗気記私抄』
* 柏鵬時代：柏戸剛と大鵬幸喜が好敵手として争った時代。白鳳文化の連想により小坂秀二が命名。

このように、白鳳は、単なる元号の名称としてだけでなく、当時の社会や文化を理解する上でも重要なキーワードとなっています。

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