大野精七

大野 精七

大野 精七（おおの せいしち）は、1885年（明治18年）8月17日に生まれ、1982年（昭和57年）12月30日にその生涯を終えた日本の著名な医師であり、医学博士でもありました。

人物と経歴

茨城県河内郡生板村（現在の稲敷郡河内町にあたります）の出身です。学業においては、東京帝国大学医学部で学び、医師としての道を歩み始めました。

医学分野でのキャリアは、北海道の地で大きく花開きます。1924年（大正13年）には、北海道帝国大学の産婦人科学教授に就任し、教育・研究活動に尽力しました。戦後の1950年（昭和25年）には、新設された北海道立札幌医科大学の初代学長に就任しました。学長として、大学の創設期における体制整備や教育環境の充実に努め、札幌医科大学の発展に多大な貢献をしました。また、晩年には東日本学園大学（現在の北海道医療大学）の初代学長（1974年7月～1977年6月）や名誉学長にあたる学園長（1977年7月～1982年12月）も務めました。

スキー界への貢献

大野精七の功績は医学分野にとどまりません。日本の、特に北海道におけるスキーの発展においても、極めて重要な役割を果たしました。北海道帝国大学への赴任を機にスキーと出会い、1921年から本格的に始めることになります。その後、ドイツでの2年間の留学を経て、帰国後の1924年には北海道帝国大学スキー部の第五代部長に就任し、部の強化とスキーの普及に取り組みました。

スキーヤーのための休息・宿泊施設である小屋の建設にも精力的に取り組みました。1926年には、手稲山に日本で初めてとなるスキー小屋「パラダイス・ヒュッテ」を建てたことは特筆されます。これは、当時のスキー環境を大きく改善する画期的な試みでした。その後も、1928年には空沼小屋、1931年には無意根小屋の建設にも関わるなど、ゲレンデ環境の整備に貢献しました。

日本のスキー界全体の組織化にも尽力し、全日本スキー連盟の設立に初期から関わりました。1936年には同連盟の副会長を務め、同年開催予定であった第5回冬季オリンピック札幌大会の招致活動では、実行委員会の副委員長として実現に向けて熱心に働きかけました。残念ながらこの大会は開催には至りませんでしたが、その熱意は後の札幌オリンピックへと繋がるものでした。また、日本のスキー競技における重要な大会である宮様スキー大会においては、生涯にわたり大会長を務めるなど、その運営と発展にも深く関与しました。これらの多岐にわたる活動から、「北海道スキーの父」とも称されることがあります。

晩年と顕彰

70歳でスキーの第一線から退いた後も、活動的な姿勢は衰えませんでした。72歳からはゴルフを始め、札幌国際カントリークラブ島松コースの名誉理事長を務めるなど、晩年もスポーツに関わり続けました。1961年には、北海道の文化振興への貢献が認められ、北海道文化賞を受賞しています。

大野精七の医学とスキーにおける功績を称え、没年である1982年には、札幌の大倉山ジャンプ競技場に「大野精七博士顕彰碑」が建立されました。

家族と著書

大野精七の子としては、札幌医科大学教授を務めた大野公吉や、同大学助教授の大野恒吉がいます。また、孫には東北大学大学院教授の大野公一のほか、大野光二、大野眞里がいます。

著書には、自身のスキー活動の記録などをまとめた私家版の『北海道のスキーと共に』があり、札幌市中央図書館に所蔵されています。

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