大野郡 (福井県)

福井県大野郡：越前国を彩った広大な郡の興亡

福井県大野郡は、かつて越前国に存在した郡です。その歴史は古く、近世から現代までの変遷は、幾度もの行政区域の変更によって複雑に織りなされています。本稿では、大野郡の地理的範囲、歴史的変遷、そしてその消滅に至るまでの過程を詳細に解説します。

1. 広大な郡域：越前国最大の面積

明治11年（1878年）の郡区町村編制法施行時点での大野郡の郡域は、現在の福井県大野市の全域、勝山市の全域に加え、福井市の一部（吉山町、薬師町、間戸町など）および岐阜県郡上市の一部（白鳥町石徹白）にまで及びました。越前国において最も広い面積を誇る郡であったことがわかります。この広大な領域は、山岳地帯から平野部まで多様な地形を含み、それぞれの地域が独自の文化や歴史を育んできたことを示唆しています。

2. 近世から明治時代：複雑な領地支配と行政区域の変遷

寛文8年（1668年）、白山麓18村が福井藩領から幕府領に移管され、加賀国能美郡に編入されるなど、近世においても大野郡の領地支配は複雑な様相を呈していました。明治時代に入ると、廃藩置県、府県統合を経て、大野郡は足羽県、敦賀県、石川県の管轄下に置かれ、その属する県が何度も変わるなど、行政区域の変遷は激しかったといえます。

明治初年には、複数の村の合併や分立が繰り返され、行政区域の整理が進められました。例えば、木本領家村と木本地頭村の合併による木本村の成立や、箱ヶ瀬村からの面谷村の分立などが挙げられます。また、明治17年には、同名が存在した複数の村が、それぞれ南北や東西といった区別をつけて改称される事例も見られます。こうした村の合併や分立は、住民生活や地域社会に大きな影響を与えたと考えられます。

明治11年（1878年）に郡区町村編制法が石川県で施行されたことで、行政区画として大野郡が正式に発足しました。その後、福井県に移管され、明治24年（1891年）には郡制が施行されています。

3. 町村制施行と昭和の大合併：大野郡の消滅

明治22年（1889年）の町村制施行により、大野郡内には多くの町村が誕生しました。大野町、勝山町といった中心的な町に加え、周辺には多くの村が成立しています。しかし、これらの町村はその後も合併や分立を繰り返し、昭和の大合併の波に呑まれることになります。

昭和29年（1954年）、大野郡内の大部分の町村が合併して大野市と勝山市が発足しました。これにより、大野郡の大部分は郡から離脱し、市制に移行しました。その後も、残された町村は合併を続け、昭和30年、昭和31年、昭和33年、昭和45年と、段階的に合併が進行していきました。そして、平成17年（2005年）11月7日、最後の町村である和泉村が大野市に編入されたことで、大野郡は完全に消滅しました。

4. まとめ：歴史と変遷を刻んだ大野郡

大野郡は、広大な面積と複雑な歴史を持つ郡でした。近世からの領地支配、明治時代の行政区域の変遷、町村制施行、そして昭和の大合併と、その歴史は様々な出来事によって彩られています。大野郡の消滅は、日本の地方行政における大きな転換点の一つであり、現代の地方自治を考える上で貴重な事例と言えます。この歴史を理解することは、現在の福井県大野市や勝山市の地域社会を深く理解することに繋がるでしょう。残された史料や記録を丁寧に紐解き、大野郡の歴史を後世に伝えることが重要です。

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