大阪大学・大阪市立大学医学部入試問題密売事件

大阪大学・大阪市立大学医学部入試問題密売事件は、1971年に社会に衝撃を与えた日本の大学における不正入学および関連する殺人事件です。

この事件の根幹にあるのは、当時、大阪大学医学部と大阪市立大学医学部の入学試験問題が印刷されていた大阪刑務所（現在の大阪府堺市堺区）でした。1960年代後半から1970年代にかけて、この刑務所に服役していた3人の受刑者が、極めて困難な試験問題の窃盗計画を練りました。この計画は5年以上の準備期間を経て、1968年1月に最初の実行が行われたとされています。彼らが考案した手口は大胆かつ巧妙でした。刑務所内の印刷工場で印刷された入試問題を盗み出し、それを内部をくり抜いたバレーボールの中に隠しました。そして、刑務所内の運動時間中に、このバレーボールを塀の外へ投げ出すという方法で問題を密かに持ち出したのです。しかし、厳重な警備体制が敷かれている刑務所から、このようにして問題を外部へ持ち出すことは極めて困難であり、事件後には刑務官による内部協力の可能性も指摘される見解が出されました。

最初の受刑者が出所した後も、残る2人のうちの1人が同じ手口で問題の持ち出しを続行しました。盗み出された試験問題は、大阪市内のホテルなどを拠点に、医学部を目指す受験生を集め、試験直前まで集中的に学習させるために悪用されました。この不正な取引により、受験生1人につき約1000万円という巨額の報酬が関係者の手に渡っていたと報じられています。

長期間にわたって続けられていた不正入学行為でしたが、問題の持ち出しを担っていた3人の受刑者が全員出所した後、後継者を見つけることができなくなったことから、試験問題の入手が困難になりました。これにより、不正な手段に頼ったにもかかわらず、全教科分の問題を入手できず不合格となる受験生が現れ始めました。結果として、高額な費用を支払った取引相手からの強い恨みを買うことになります。さらに、この不正行為に関わった3人のうち、最初に刑務所を出た人物が不正による利益を他の関係者よりも多く得ていたことが、内部での対立を深めました。そして、この主犯格の男性が大阪市西区の路上に停車していた車内で刺殺されるという衝撃的な事件が発生しました。この殺人事件の容疑者として逮捕されたのが、かつて刑務所で共に問題を盗み出した残りの2人の受刑者でした。

殺人事件の捜査が進められる中で、事件の背景に大学入試問題の不正な持ち出しがあり、それを利用した受験生が不正に入学していたという深刻な事実が明るみに出ました。この事件が社会に報道され、その全容が知られるようになったのは1971年3月6日のことでした。

事件に関わった人物たちの動機は様々でした。入試問題の窃盗を実行した犯人の動機は明確な金銭目的でした。一方、受験生と犯人の間を取り持った仲介者は、自身の子供を医学部に入学させたいという強い思いから行動しており、自身は金銭的な利益を一切得ておらず、むしろ被害者であると主張しました。この事件を受けて、不正な手段で大学に入学した学生たちは、大学側から自主退学を勧められるか、あるいは強制的な退学処分を受けました。入試問題の窃盗という犯罪行為を実行した犯人たちに対しては、裁判の結果、実刑判決が下されています。この事件は、大学入試における公平性や刑務所の管理体制など、当時の日本の社会システムに多くの問題を提起しました。

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