大阪市立大阪北小学校

大阪市立大阪北小学校

大阪市立大阪北小学校は、大阪市北区に存在した公立小学校です。少子化の進行と都心部における人口の郊外流出（ドーナツ化現象）により児童数が大幅に減少していた、前身にあたる大阪市立曽根崎小学校と大阪市立梅田東小学校を統合する形で、平成元年（1989年）に旧曽根崎小学校の敷地に新たに開校しました。

開校後も児童数の減少傾向は止まらず、閉校が近づく2002年度から2006年度にかけては、児童数の極端な減少に対応するため複式学級を導入していました。これは当時、大阪市内の小学校では他に例を見ない状況でした。児童数の回復が見込めないことから、開校からわずか18年後の2007年3月をもって閉校し、大阪市立扇町小学校に統合されました。また、1997年から新規募集を停止していた併設の大阪市立曽根崎幼稚園も同時に閉園となりました。

沿革：前身校からの流れ

大阪北小学校の歴史を語る上で、直接の前身校である曽根崎小学校と梅田東小学校、そしてさらにそのルーツとなる堂島小学校、北野国民学校、中之島国民学校（いずれも当時の校名）の歴史に触れることは欠かせません。

曽根崎小学校の源流

明治初期の学制発布に伴い、明治7年（1874年）7月24日、西成郡曽根崎村に西成郡第三区第一番小学校が開設されました。この学校が、後に曽根崎小学校となる母体です。当初は曽根崎村、北野村、川崎村を校区としていましたが、翌年には北野村と川崎村を校区とする第八番小学校（後の梅田東小学校）が分離しました。

第一番小学校はその後、西成郡曽根崎尋常小学校、大阪市への編入を経て大阪市曽根崎尋常高等小学校と改称しました。校舎は梅田1丁目の阪神百貨店南側付近への移転（明治28年・1895年）を経て、明治43年（1910年）には現在の曽根崎2丁目に移転し、閉校までその地にとどまりました。

梅田東小学校と北野小学校の設立

曽根崎小学校が開校した翌年の明治8年（1875年）5月7日には、第一番小学校から分離する形で、北野村と川崎村を校区とする西成郡第三区第八番小学校が北野村に誕生しました。この第八番小学校が、後の梅田東小学校です。創立当初は太融寺の東隣に位置していました。

第八番小学校は当初、野崎小学校と称し、北野村と川崎村が合同で運営にあたりました。両村は明治30年（1897年）の大阪市編入後も、旧両村の地域をひとつの学区として学校運営が一体的に行われました。ここでいう「学区」は財産負担区域としての制度であり、現在の校区とは異なります。

地域の人口増加に伴い、明治34年（1901年）には旧川崎村を校区とする大阪市川崎尋常小学校（後の大阪市天満国民学校）を分離し、校名を大阪市北野尋常小学校と改めました。さらに明治35年（1902年）には、北野尋常小学校から大阪市第二北野尋常小学校（後の北野国民学校）が分離新設され、これにより従来の北野尋常小学校は第一北野尋常小学校と改称しました。

第一北野尋常小学校は明治39年（1906年）9月、現在の茶屋町に移転し、平成元年（1989年）の閉校までその地で教育活動を行いました。

大正9年（1920年）、北野・川崎学区は教育勅語の文字から「済美学区」と称されることになり、域内の小学校名も「済美」を冠したものに変更されました。これにより、第一北野尋常小学校は済美第一尋常小学校、第二北野尋常小学校は済美第三尋常小学校となりました。済美学区には合計6校の小学校が設置され、大正11年（1922年）には日本で初めて常勤の学校衛生婦（現在の養護教諭の源流）が配置されたことで知られています。

済美第三尋常小学校は昭和3年（1928年）に現在の南扇町、北税務署付近に移転しています。

昭和16年（1941年）には国民学校令が施行され、済美第一尋常小学校は梅田東国民学校、済美第三尋常小学校は北野国民学校へとそれぞれ改称されました。

堂島小学校の歩み

一方、大坂三郷に属していた堂島地区には、学制発布時に堂島東・堂島西・北新地の三つの小学校が設立されました。これら三校は明治16年（1883年）に統合され、堂島小学校（後に堂島尋常小学校）が誕生しました。

堂島尋常小学校は、周囲を民家等に囲まれ運動場の拡張が困難であったため、昭和4年（1929年）に現在の堂島3丁目、旧大阪市役所跡地の一部に移転しました。昭和10年（1935年）に制定された校歌は、北原白秋が作詞、山田耕筰が作曲を手がけるという、著名な二人の合作として知られています。

昭和16年（1941年）、国民学校令により堂島国民学校と改称し、文部省から体育の研究校に指定されるなど、体育教育に力を入れました。

中之島小学校の設立と廃校

中之島地区にも、明治5年（1872年）に肥後島、田簑、中島の三小学校が設立されました。これら三校が統合され、明治19年（1886年）4月に旧田簑小学校跡地（現在の大阪市立科学館付近）に中之島尋常小学校が設置されました。

近くにあった大阪府師範学校附属小学校が天王寺に移転した際、通学が困難になった児童が多く中之島尋常小学校に転入したため、設備が手狭になり、明治34年（1901年）4月に師範学校附属小学校の跡地（現在の大阪市立科学館北側付近）に移転しました。昭和19年（1944年）の閉校まで同じ場所に校舎がありました。

中之島尋常小学校は昭和16年（1941年）に中之島国民学校と改称しましたが、太平洋戦争中の校舎転用により廃校の憂き目を見ます。戦時措置で女子商業学校が増設されることになり、校舎新築が困難だったため、近隣校への統合により空いた中之島国民学校の校舎が転用されることになったのです。中之島国民学校は堂島国民学校に統合される形で、昭和19年（1944年）に廃止されました。使用されなくなった校舎には大阪市立中之島女子商業学校が開校しましたが、終戦直後の昭和21年（1946年）に大阪市立扇町商業学校（現在の大阪市立扇町総合高等学校）に統合されています。

戦争と再編

太平洋戦争の激化に伴い、昭和19年（1944年）9月からは都市部の国民学校児童を対象とした学童集団疎開が実施されました。北区の各国民学校も滋賀県へ疎開しています。曽根崎国民学校は東浅井郡、堂島国民学校は高島郡、梅田東国民学校は長浜市、北野国民学校は東浅井郡へと向かいました。

昭和20年（1945年）の大阪大空襲は、地域に甚大な被害をもたらしました。曽根崎国民学校と梅田東国民学校の校舎は空襲で被災し、北野国民学校と堂島国民学校の校舎は被害を免れたものの、校区は壊滅的な状況となりました。

終戦直後、戦災による校舎の焼失や地域人口の激減に対応するため、国民学校の大幅な統廃合が行われました。昭和21年（1946年）、堂島国民学校と北野国民学校は休校となり、曽根崎国民学校に統合されました。旧北野国民学校の校舎は大阪市立扇町商業学校に、旧堂島国民学校の校舎は大阪市立扇町高等学校に転用されました。堂島国民学校の跡地は、その後NTT関連のビルが建設されています。

昭和22年（1947年）の学制改革により、この地域では大阪市立曽根崎小学校と大阪市立梅田東小学校が発足しました。

戦後の復興と再開

戦後の復興が進むにつれて、堂島地区の住民から堂島小学校の再開を求める声が高まりました。これを受け、戦前とは異なる場所（現在の堂島2丁目）に敷地を確保し、昭和34年（1959年）4月1日、大阪市立堂島小学校が再開校しました。再開時には、地域に住む5年生以下の児童が曽根崎小学校から転校する形で受け入れられました。

また、都心部の繁華街を校区に持つ曽根崎小学校は、1950年代以降、特に健康教育に力を入れました。その取り組みが評価され、昭和36年（1961年）には朝日新聞社主催の健康優良学校日本一に選出されています。

大阪北小学校の誕生と閉校

しかし、高度経済成長を経て都心部から郊外への人口移動が進み、この地域の小学校でも児童数の減少が顕著になりました。これを受けて、小学校の統廃合が具体的に検討されるようになります。

昭和60年（1985年）9月27日、曽根崎小学校と堂島小学校の統合が正式に決定しました。統合校は大阪市立曽根崎小学校として、従来の曽根崎小学校の校舎を使用することになり、統合は昭和61年（1986年）4月1日付で実施されました。

この統合から3年後、平成元年（1989年）には、さらに曽根崎小学校と梅田東小学校が統合されることになりました。統合校は大阪市立大阪北小学校と命名され、従来の曽根崎小学校の敷地を引き続き使用しました。大阪市立大阪北小学校は平成元年（1989年）4月1日に開校しました。旧梅田東小学校の跡地は大阪市梅田東学習ルームを経て、2017年からは大阪工業大学梅田キャンパスとなっています。

大阪北小学校が開校した後も児童数の減少傾向は止まらず、2000年代には前述の通り、大阪市では珍しい複式学級が導入されるほどの状況になりました。この状況を背景に、大阪北小学校のさらなる統合が検討されました。

検討の結果、大阪北小学校は大阪市立扇町小学校と統合することが決定しました。統合校の校名は大阪市立扇町小学校とし、従来の扇町小学校の敷地を使用することになりました。大阪市立大阪北小学校は、開校から18年という短い歴史に幕を下ろし、平成19年（2007年）3月31日付で閉校し、扇町小学校に引き継がれました。その跡地には、2022年に「梅田ガーデン」が建設されています。

主な出身者（前身校含む）

旧・曽根崎小学校
長谷川 幸延（作家）
宮本 輝（作家）
伊藤 満洲雄（実業家、伊藤博文の孫）
旧・堂島小学校
武智 鉄二（映画監督・演出家・演劇評論家）
森繁 久彌（俳優）
秦 豊（元参議院議員・ニュースキャスター）
* 竹綱 貞男（実業家）

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