大坂三郷

大坂三郷：近世大坂の町人地

大坂三郷は、江戸時代の大阪城下において、町人たちが生活した3つの地域を指す総称です。北組、南組、そして天満組の3つの組から構成されており、現在の大阪市中央区の大部分、西区の東部、北区の南部に相当する地域を包含していました。ただし、大坂城代や奉行などの役人の住居、寺院、神社などの土地は含まれていませんでした。

三郷の地理と構成

大坂三郷は、おおむね本町通を境に北組と南組に分けられ、大川と古川の北側が天満組となっていました。しかし、堀江や玉造、下船場など、後世に開発された地域については、この区分が必ずしも当てはまらない部分もありました。初期には伏見組という地域もあったとされていますが、後に北組と南組に編入されて消滅したと考えられています。18世紀後半の天明年間には、北組250町、南組261町、天満組109町が存在していました。

各組には、惣年寄を筆頭とする惣会所と惣代、そして各町には町年寄を筆頭とする町会所と町代が置かれ、組は町と大坂町奉行の間に位置する中間組織として機能していました。惣会所の所在地は、北組が平野町3丁目、南組が南農人町1丁目（現・農人橋1丁目）、天満組が天満7丁目（現・天満4丁目）でした。また、毎年各組は宗門人別改帳を寺社役与力に提出する「巻納め」という行事を行い、北組は本願寺津村別院（北御堂）、南組は真宗大谷派[[難波別院]]（南御堂）、天満組は真宗大谷派天満別院（佛照寺）で行われていました。

町の運営と町定

大坂三郷の町では、道路や溝の管理、火災対策、橋の修復、さらには捨て子や行倒れ人の世話など、日常生活に関わる様々な問題を町内が処理し、その費用を負担していました。正月には初穂を神社に納め、地域の祭礼行事にも支出していました。相撲の観戦費用や勧進能などの費用も町内が負担していました。このように、町の公共的機能は現代社会のものとは比較にならないほど広範かつ重要なものでした。

町の運営には「町内式目」と「勘定仕法」と呼ばれる規則が定められていました。町内式目には、家屋敷の売買に関する規定、騒音や火災の危険のある職種への規制、家屋の建築に関する規定などが盛り込まれており、生活環境の保全に重点が置かれていました。また、町並みの統一性も重視され、建物の外観や道路への張り出しなどが規制されていました。勘定仕法は、公役や町役の負担方法を詳細に規定したもので、家持、表借家人、裏借家人の負担割合などが細かく定められており、住民の移動が激しく借家人の比率が高かった大坂の町内において、共同体の維持に重要な役割を果たしていました。

明治以降の変遷

1869年（明治2年）、大坂三郷は東大組、南大組、西大組、北大組の4地域に再編され、その後、東区、南区、西区、北区となりました。明治時代には、大区小区制の施行、小学校の設置、戸長役場の設置と廃止などが行われ、最終的に1889年（明治22年）の市制施行により、各区は大阪市の行政区となりました。

まとめ

大坂三郷は、近世大坂における町人地の重要な構成要素でした。その組織運営や町内法、そして明治以降の変遷を知ることは、現代の大阪の礎を理解する上で欠かせない要素となります。町内式目や勘定仕法といった詳細な規定は、当時の町内共同体の維持と発展に大きく貢献していたと言えるでしょう。 この資料は、大坂三郷の複雑な歴史を理解する上で、重要な情報を提供しています。

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