大阪府立大学生命環境科学域・大学院生命環境科学研究科

大阪府立大学 生命環境科学域

大阪府立大学生命環境科学域は、生命、環境、応用科学、さらには理学や獣医学といった広範な分野を包含する組織として設置されていました。これに対応する大学院研究科として、生命環境科学研究科がありました。その歴史は古く、明治時代にまで遡る多様な府立学校をルーツに持ち、大阪府堺市の中区にある中百舌鳥（なかもず）キャンパスと、大阪府泉佐野市のりんくうキャンパス（主に獣医学系）に拠点を置いていました。2022年度からの大阪公立大学への移行に伴い、その機能は農学部、獣医学部、理学部などへ引き継がれています。

沿革

生命環境科学域の起源は、1883年に大阪府立大阪医学校内に設置された獣医学講習所に求められます。翌1888年には、旧堺師範学校を仮校舎として大阪府立農学校が開校し、獣医学講習所は獣医科としてこれに統合されました。この農学校はその後、大阪市生野区の御勝山、次いで堺市の仁徳陵近くへと移転し、教育内容も拡充。獣医科は獣医畜産科を経て、1942年には旧制専門学校である府立大阪高等獣医学校（後に大阪獣医畜産専門学校）へと発展しました。並行して、農学校から分離独立した大阪府立園芸学校や、戦中に開校した大阪農業専門学校も、生命環境科学域を構成する重要なルーツです。

これらの旧制専門学校、すなわち大阪獣医畜産専門学校と大阪農業専門学校は、1949年に設立された新制浪速大学に包括され、農学部の母体となりました。この農学部には、農学科、園芸学科、農芸化学科、獣医畜産学科などが置かれました。浪速大学は1955年に大阪府立大学と改称。大学院農学研究科が設置され、1960年代末には農学部全体が新設されたなかもずキャンパスへ移転しました。その後、学科再編や大学院組織の改組を経て、2005年の大阪府立大学、大阪女子大学、大阪府立看護大学の三大学統合・法人化を機に、農学部は生命環境科学部と名を改め、同時に新たに理学部とその大学院理学系研究科が設置されます。生命環境科学部でも学科の再編が行われました。

2012年には府立大学は従来の学部・学科制を廃止し、4学域13学類からなる学域制へと移行しました。この際、生命環境科学部と理学部が統合され、生命環境科学域が誕生しました。理学部は生命環境科学域内の自然科学類となり、旧生命環境科学部は獣医学類、応用生命科学類、緑地環境科学類へと改組されました。2016年には学部・学科の募集を停止し、学域制へ完全に移行。2018年には自然科学類が理学類と名称を変更し、数理科学課程が加わっています。生命環境科学域は、このように複数の源流を持ち、幾度かの改組と統合を経て、現在の姿に至りました。

概要

生命環境科学域は、大きく分けて以下の四つの学類を中心に教育・研究を展開していました。

獣医学類: 大阪府泉佐野市のりんくうキャンパスに位置し、動物の健康と生命に関する高度な専門知識と技術を修得する分野です。大学院生命環境科学研究科獣医学専攻と連携し、動物構造機能学、獣医環境科学、獣医臨床科学などの分野を網羅しています。
応用生命科学類: なかもずキャンパスにあり、生命現象を理解し、食料、環境、健康などに応用することを目指します。生命機能化学課程と植物バイオサイエンス課程があり、生命機能、生物情報、植物バイオといった多様なアプローチで生命科学を探究します。大学院応用生命科学専攻に対応します。
緑地環境科学類: なかもずキャンパスを拠点とし、人と自然が調和する持続可能な社会の実現を目指します。生態気象学、水環境学、緑地計画学、地域生態学、環境動物昆虫学など、非常に幅広い専門分野があり、緑地の創出・管理、生態系保全、都市環境の改善、地域資源の活用など、多角的な視点から研究を行います。大学院生命環境科学研究科緑地環境科学専攻が連携組織です。
理学類: なかもずキャンパスで基礎科学を深く探究する学類です。数理科学、物理科学、分子科学、生物科学の四つの課程があり、自然界の普遍的な法則や生命の根源を解明することを目指します。大学院については、学域制移行後も大学院理学系研究科として独立した組織であり、理学分野の高度な研究教育を担いました。

大阪公立大学への移行

2022年度以降は、生命環境科学域は発展的に解消され、その教育・研究機能は大阪公立大学の新しい組織に引き継がれています。具体的には、獣医学類は獣医学部へ、理学類は理学部へ、応用生命科学類と緑地環境科学類は主に農学部へと改組され、それぞれの大学院研究科も再編されました。

結論

大阪府立大学生命環境科学域は、長きにわたる歴史の中で多様な専門分野を取り込み、生命、環境、応用科学、理学、獣医学という広範な領域の教育・研究を推進した組織です。その蓄積は、大阪公立大学の関連学部・研究科に継承され、新たな時代における教育研究活動へと繋がっています。

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