大阪府立茨田高等学校

大阪府立茨田高等学校は、大阪府大阪市鶴見区にかつて設置されていた公立の全日制普通科高等学校です。「まった」と読む校名は、この地域を含む旧河内国の郡名に由来し、歴史的な背景を持つ地に根ざしていました。1975年の開校以来、約半世紀にわたり地域教育の一翼を担いましたが、大阪府の高等学校再編計画に伴い、2025年3月31日をもって閉校しました。

設立の背景と沿革

学校が設立される契機となったのは、1970年代初頭における大阪市、特に当時の城東区での生徒数の急増でした。この状況に対し、地域住民の間で高等学校の増設を求める声が高まり、1972年には「城東区に府立高校を作る会」が発足。市民の強い要望に応える形で、大阪府教育委員会は城東区への府立高校新設を決定しました。

新設校の建設地として選ばれたのが、1973年の現在地、城東区茨田安田町（現在の鶴見区安田）でした。学校建設に伴う事前の調査では、敷地から「茨田安田遺跡」が発見されるという歴史的な出来事もありました。こうした背景を経て、校舎の工事が進められ、1974年6月26日には第一期工事が開始されました。この日が後に創立記念日と定められています。そして、翌1975年4月1日、大阪府立茨田高等学校として正式に開校の運びとなりました。開校翌年の1976年には、学びの精神を歌い継ぐ校歌も制定されました。

教育方針と特色

茨田高等学校では、全日制普通科の高校として、生徒一人ひとりの基礎学力の向上と定着に重点を置いた教育を実践していました。特に、社会生活や人間関係において不可欠なコミュニケーション能力の育成を重視し、これらを教育活動の柱としていました。鶴見区の東端という地理的な位置から、東大阪市、大東市、門真市といった隣接する市からの生徒も多く受け入れ、広範な地域から集まる生徒たちが共に学び合える環境を提供していました。

閉校の経緯

大阪府では、少子化などの社会情勢の変化に対応するため、府立高等学校の配置見直しと機能統合を進めてきました。この再編計画の一環として、茨田高等学校も対象となり、2021年8月30日に大阪府教育委員会によって大阪府立野崎高等学校との機能統合による再編整備の方針が決定されました。

この決定に基づき、茨田高等学校は2022年度の入学生を最後に、新規の生徒募集を停止しました。2023年度以降は、既存の在校生のみが卒業に向けて学ぶ形となりました。そして、最後の学年が卒業を迎えた2025年3月31日をもって、40年以上に及ぶ歴史に幕を下ろし、閉校となりました。学校の機能は、統合先である大阪府立野崎高等学校に引き継がれました。

著名な卒業生

茨田高等学校は、各界に多くの人材を輩出しています。特にスポーツやエンターテインメント、クリエイティブな分野で活躍する卒業生が知られています。

手塚 卓志: 世界的に有名なゲームメーカーである任天堂の情報開発本部製作部長を務めるゲームクリエイター。
清宮 克幸: 日本ラグビー界で指導者として実績を残したラグビー監督。
北川 有広: ラグビー選手として活躍。
桂 坊枝: 上方落語家として高座を務める。
5代目 林家 小染: 若くして将来を嘱望された落語家。
三原 徹司: ナレーターとして活動。
* 中馬 めぐみ: 元タレント。

所在地とアクセス

学校は大阪府大阪市鶴見区安田4丁目に位置していました。公共交通機関を利用する場合、大阪シティバスおよび近鉄バスの「安田」バス停からすぐの場所にありました。鉄道を利用する場合は、Osaka Metro長堀鶴見緑地線の横堤駅から東へ約1.7km、またJR西日本片町線（学研都市線）の鴻池新田駅から北西へ約1.8kmの距離にあり、バスや徒歩でアクセスが可能でした。

長年の歴史を持ち、多くの生徒の学び舎であった大阪府立茨田高等学校は閉校となりましたが、その教育の歩みと地域との関わり、そして卒業生たちの活躍は、地域社会の中に記憶として受け継がれていくことでしょう。

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