大阪慶應義塾

大阪慶應義塾について

大阪慶應義塾は、1873年（明治6年）11月から1875年（明治8年）にかけて、現在の大阪市中央区に存在した慶應義塾の教育機関です。東京の慶應義塾に通うことが困難な関西の学生を対象として、大阪の安堂寺橋通三丁目に開設されました。

設立の背景

明治維新後、大阪における「人民の自由」の衰退を危惧した塾関係者によって、分校設置の構想が持ち上がりました。福澤諭吉もこの構想に賛同し、設立願書に名を連ねています。当時の大阪は、学問よりも商売を重視する風潮があり、この状況を憂慮した福澤諭吉らが、大阪での教育機会提供を目的としたと考えられています。

教育内容

大阪慶應義塾では、英文学、算術、訳書の3学科が設置され、東京の慶應義塾から派遣された荘田平五郎、名児耶六都、岩田蕃らが交代で教鞭をとりました。「算術」の授業では、和算と西洋式数学の両方が教えられていた点が特徴的です。これは、当時の教育において、伝統的な学問と新しい学問の両方を学ぶ必要があったことを示唆しています。

移転と閉塾

開塾から約半年後の1874年（明治7年）6月には、北浜町二丁目に移転しましたが、翌年には閉塾となりました。短い期間ではありましたが、英書科には75人、訳書科には11人、合計86人の学生が在籍しました。

閉塾の理由

閉塾の理由としては、以下の点が挙げられます。

交通の発達により、地方から東京へ行くことが容易になり、大阪の分校に通う必要性が薄れたこと
教員の頻繁な交代により、教育の質が安定しなかったこと
大阪の商人気質により、学問への関心が低かったこと

これらの要因が複合的に絡み合い、大阪慶應義塾は短期間でその役割を終えることとなりました。

その後

大阪慶應義塾の閉塾後、その流れを汲む形で徳島慶應義塾が開塾しましたが、こちらも1年あまりで廃止されています。大阪での慶應義塾の活動は、残念ながら短期間で幕を閉じることとなりました。

記念碑

2009年（平成21年）には、旧所在地である北浜二丁目に大阪慶應義塾跡記念碑が設置されました。記念碑には福澤諭吉の筆跡で「独立自尊」と刻まれており、上部にはペンがクロスしたデザインが施されています。これは、福澤諭吉の教育理念を象徴するとともに、大阪慶應義塾の存在を後世に伝えるものとなっています。

まとめ

大阪慶應義塾は、短期間ながらも大阪における教育の発展に貢献した教育機関です。その存在は、大阪における学問への意識改革の必要性を示唆するとともに、福澤諭吉の教育理念を体現するものであったと言えるでしょう。跡地に建てられた記念碑は、その歴史を今に伝えています。

関連情報

福澤諭吉生誕地： 大阪市福島には、塾祖福澤諭吉の生誕地があります。
適塾： 同じく大阪に存在した緒方洪庵の蘭学塾である適塾も、当時の教育を語る上で重要な存在です。
京都慶應義塾： 同じく慶應義塾の分校として、京都にも慶應義塾が存在しました。
慶應大阪シティキャンパス： グランフロント大阪北館タワーCの10階には、慶應義塾の大阪拠点である慶應大阪シティキャンパスがあります。

参考文献

加藤三明、山内慶太、大澤輝嘉 編著 『慶應義塾 歴史散歩 全国編』 慶應義塾大学出版会、2017年　ISBN 978-4-7664-2470-6

外部リンク

『慶應義塾豆百科』 No.27 大阪慶應義塾
各地に建立された慶應義塾「記念碑」：[慶應義塾]

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