大阪物語 (1999年の映画)

『大阪物語』は、1999年に公開された市川準監督による日本映画です。大阪を舞台に、ある家族の日常と、その家族を取り巻く人々の人間模様を描いた作品です。

物語の中心となるのは、中学2年生の若菜とその家族。両親は「はる美＆りゅう介」という売れない漫才師で、そのネタはいつもワンパターン。若菜と弟の一郎は、そんな両親の真似をして近所の人たちを笑わせる毎日を送っていました。決して裕福ではないものの、家族4人は幸せな日々を送っていました。

しかし、ある日、父親の隆介が20歳も年下の女性・妙子を妊娠させてしまいます。これまでも夫の浮気を大目に見てきた春美でしたが、今回はさすがに堪忍袋の緒が切れ、夫婦としての関係は解消。ただし、漫才コンビは解消せず、隆介は妙子と再婚し、元の家からほど近い場所に住み始めます。その一方で、春美は別れた夫とスナックを経営するという、一風変わった関係を築いていきます。

年が明け、妙子は女の子を出産し「千里」と名付けられました。別れたはずなのに、結婚していた頃よりも仲が良い両親の関係を理解できないながらも、若菜は腹違いの妹の面倒を見たり、家事を手伝うなど、家族を支えようとします。しかし、そんなある日、隆介がまたしても浮気をし、妙子が家を飛び出してしまいます。残された千里の面倒を見る事になった若菜一家。隆介はショックから酒に溺れ、ある日、姿を消してしまいます。

夏休みに入り、若菜は隆介を探す旅に出ます。その道中で、登校拒否をしている同級生のトオルと再会。二人は隆介を探すために大阪の街を歩き回ります。その中で、若菜は隆介の意外な一面を知り、自分自身を見つめ直すようになります。しかし、隆介は見つからず、若菜は隆介が大阪を離れてしまったのではないかと考えるようになります。そんな時、元夫婦漫才師の大先輩であるカナの「大阪に一度住んだ者は、大阪を離れられない」という言葉を聞き、隆介がまだ大阪にいることを確信します。その後、隆介から古い知り合いの元に暑中見舞いが届いていたことがわかり、若菜は一安心します。

しかし、若菜とトオルの前に、補導員とトオルの喧嘩相手が現れ、橋で挟み撃ちにされてしまいます。追いつめられたトオルは、若菜に別れを告げると川に飛び込みます。その姿を逞しく見送る若菜に、補導員は隆介が交通事故で入院したことを知らせます。病院に駆けつけた若菜は、久しぶりに家族と再会します。

隆介が亡くなったのは、それから1ヶ月後のことでした。葬儀で、春美は若菜に夫婦の墓を隣同士に作る計画を語ります。様々な出来事があった中学校時代を振り返りながら、若菜は未来へと歩き出そうとするのでした。

この映画には、池脇千鶴、沢田研二、田中裕子、南野公助など、豪華なキャストが出演しています。また、夢路いとし、喜味こいし、中田カウス・ボタンなど、大阪を代表する芸人たちが多数出演しているのも見どころです。

監督は市川準、脚本は犬童一心、音楽は朝川朋之が担当しています。主題歌は尾崎豊の「風にうたえば」、挿入歌は真心ブラザーズの「ENDLESS SUMMER NUDE」が使われています。また、ロケ地には、今宮戎神社、なんばグランド花月、花園商店街振興組合など、大阪を象徴する場所が選ばれています。

『大阪物語』は、家族の絆、人間関係の複雑さ、そして大阪の街の魅力を、温かく、そして時にはコミカルに描いた作品です。1999年のキネマ旬報ベストテンで第8位、読者選出で第7位に選ばれるなど、高い評価を受けています。2018年には初DVD化されました。

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