喜味こいし

喜味こいし：上方漫才史に輝くレジェンドの生涯

喜味こいし（きみこいし、1927年8月6日生まれ、2011年1月23日没）は、日本の漫才師、俳優。兄である夢路いとしとの漫才コンビ「夢路いとし・喜味こいし」は、上方漫才史に燦然と輝く存在として、多くの人々に愛された。本名は篠原勲（しのはら いさお）。神奈川県横浜市出身だが、一家が旅回りの芸人だったため、幼少期は全国各地を転々とした。

芸の道へ

幼少期より子役として舞台に立ち、1940年には実兄と共に荒川芳丸一門に入門。吉本興業から「荒川芳坊」としてデビューする。その後、兄の徴兵によりコンビは一時解散するが、こいしは志願兵として広島で兵役につく。1945年8月6日、広島市で原爆被爆という、生涯にわたる大きな経験をすることとなる。奇跡的に軽傷ですんだものの、その惨状は彼の心に深く刻まれた。

戦後、漫才作家・秋田實に師事し、「夢路いとし・喜味こいし」として活動を再開。独特のテンポの良いしゃべくり漫才で人気を博し、上方お笑い大賞、上方[[漫才大賞]]など数々の賞を受賞した。

「ぼくたちは常にナンバー2」というモットーを掲げ、肩の力を抜いた自然体で時代を反映した漫才は、多くの後輩芸人に影響を与えた。上岡龍太郎、明石家さんま、島田紳助ら、多くの芸人が彼らを師と仰ぎ、芸を学んだ。関東の芸人からも深い尊敬を集め、ビートたけしや志村けん、爆笑問題らもその芸を高く評価している。

漫才師としての魅力

こいしの漫才の魅力は、兄・いとしとの絶妙なコンビネーションにあった。いとしが独特のユーモラスなボケを繰り出すと、こいしは男前な容姿とガラガラ声で、鋭く、そして自然な笑顔で突っ込む。そのツッコミは、決して流れを止めることなく、むしろいとのしのボケをさらに際立たせる名人であった。「ほうほう」「それでどないしたんや」といった軽妙な合いの手は、絶妙な間とタイミングで、二人の漫才をさらに魅力的なものにしていた。ボケとツッコミの役割は固定されていなかったことも特徴の一つである。

代表作として「交通巡査」「親子丼」「こいしさんこいしさん」「もしもし鈴木です」「ジンギスカン」など多くの名作を残した。定番のネタフリは、「なぁなぁ、君んとこの嫁はん元気か？」という、こいしからいとしへの問いかけから始まるパターンであった。

多彩な活動

漫才師としての活動以外にも、俳優として舞台やテレビドラマ、映画にも多数出演した。テレビでは『痛快!エブリデイ』などのレギュラー番組にも出演するなど、幅広い活躍を見せた。また、2005年には被爆60年を機に、娘の喜味家たまごと共に広島平和記念公園を訪れ、被爆体験を語っている。

晩年と死

1977年に膀胱がんを患い、2003年には兄・いとしが死去。その後、漫才を引退し、テレビのコメンテーターや講演活動に力を注いだ。2010年1月には肺がんを発症、闘病生活を送るも、2011年1月23日、83歳で死去。多くの著名人から追悼のコメントが寄せられた。

まとめ

喜味こいしは、上方漫才の黄金時代を支え、数々の名作を生み出した偉大な芸人であると同時に、広島での被爆体験を乗り越え、芸人として、そして一人の人間として生き抜いた人生は、多くの感動と教訓を与えてくれる。彼の功績は、これからも上方漫才、そして日本の芸能史に語り継がれていくであろう。

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