大阪電気軌道デワボ1800形電車

大阪電気軌道デワボ1800形電車

大阪電気軌道デワボ1800形電車は、大阪電気軌道（大軌、後の近畿日本鉄道）が保有していた木造有蓋貨物電車です。特筆すべきは、奈良線規格の小型木造車体を持ちながら、車両限界の大きい大阪線で運用された点です。

概要

桜井線（現在の大阪線の一部）延伸開業に伴い、直流1,500V電化区間用の電動貨車が必要となりました。無蓋電動貨車としてデトボ1600形が新造された一方、有蓋電動貨車については、製造費を抑えるため、奈良線用デボ61形の旧車体を流用することになりました。当時、デボ61形は車体を鋼製に載せ替える工事が進められており、そのうちデボ78・79の旧車体が再利用されることになったのです。これらの車体に、新製の1,500V対応機器を組み合わせることで、デワボ1800・1801の2両が1930年5月に誕生しました。

車体

車体はデボ61形のものを大きく改造せずに流用したため、全長15,459mm、全幅2,500mmという、奈良線規格の小型木造車体のままとなりました。窓配置はD(1)3 D" 3(1)D（D：片開き扉、D"：両開き扉、(1)：戸袋窓、数字：窓数）です。デボ61形の車体中央部にあった片開き扉と、その両脇の側窓各1枚を撤去し、有効開口幅1,590mmの両開き扉を設置。さらに、その両脇の側窓各1枚分を潰して戸袋としました。前面は、当時関西の私鉄で流行していた5枚窓構成の卵形流線型運転台が採用され、そのデザインは本形式にも引き継がれました。屋根はダブルルーフ（レイルロード・ルーフ）と呼ばれる二重構造で、通風器はガーランド式が片側面あたり3基ずつ設置されています。床下にはトラス棒を備え、ターンバックルで反りを補正する構造も、種車のものをそのまま継承しています。積載最大荷重は10tでした。

主要機器

主要機器は、後続のデトボ1600形とほぼ同様の構成で新造されました。

主電動機

デボ600形用三菱電機MB-213-AFの姉妹機種であるMB-213-BFを各台車に2基ずつ搭載。駆動方式は吊り掛け式で、歯数比は25:54=2.16、これによる定格速度は64.5km/hでした。

主制御器

日立製作所PR200を搭載。布施以西で奈良線に乗り入れて架線電圧が直流600Vとなるため、直流1,500Vと直流600Vの2つの電圧に対応する電圧転換装置も搭載されていました。

ブレーキ

単行運転を前提として設計されたため、本形式単独で作用する直通ブレーキと手ブレーキを搭載していました。

台車

日立製作所MI形と称する、ボールドウィンA形台車をデッドコピーした組立式の釣り合い梁式台車を装着。軸距は2,130mmでした。

運用

大阪電気軌道の1,500V区間用車両としては唯一の有蓋電動貨車であり、複電圧仕様であったことから重宝されました。1941年の参宮急行電鉄との合併と、それに伴う関西急行鉄道への改組の際、モワ1800形1800・1801と改称されました。1949年には1801が、1951年には1800も荷物電車に改造され、塗装も貨車標準色の黒から、電車標準色のダークグリーンに変更されました。その後、他の電動貨車と同様の経緯をたどり、1963年8月20日の形式称号改正でモワ2830形2832・2831へ改番。さらに、老朽化した車体を1967年と1968年にモ430形450・448のものへ順次置き換え、1970年3月2日の2桁形式への改番時にはモワ80形84・83へ改番されました。最終的に、1976年3月29日付で除籍され、その後解体されました。

参考文献

鉄道史資料保存会『近鉄旧型電車形式図集』、鉄道史資料保存会、1979年
『関西の鉄道 No.33』、関西鉄道研究会、1996年
『鉄道ピクトリアル No.727 2003年1月臨時増刊号』、電気車研究会、2003年
藤井信夫『車両発達史シリーズ8 近畿日本鉄道 一般車 第1巻』、関西鉄道研究会、2008年

外部リンク

鉄路の名優 電動貨車 - 近畿日本鉄道

関連項目

近畿日本鉄道の車両形式

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