大韓航空機YS-11ハイジャック事件

大韓航空機YS-11ハイジャック事件

大韓航空機YS-11ハイジャック事件は、1969年12月11日に発生した、朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）の諜報員によって引き起こされた航空機のハイジャック事件です。この事件は、韓国の航空史において、1958年の滄浪号ハイジャック事件に続く重要な事件とされ、1970年のよど号ハイジャック事件における韓国当局の対応にも大きな影響を与えました。イベント以降、一部の乗員や乗客が北朝鮮に留まったため、これは単なるハイジャックではなく、北朝鮮による拉致事件とも見なされています。また、ハイジャック事件によって、製造元である日本航空機製造からリースされていた日本の国産旅客機YS-11も北朝鮮側に奪われる事態となりました。

事件の概要

この事件は、1969年12月11日に、江陵発ソウル行きの大韓航空機（YS-11、登録番号HL5208）がハイジャックされることから始まります。機体には約47名の乗客と4名の乗員が搭乗しており、午後12時25分に離陸した直後、ハイジャックが行われました。ハイジャッカーは、元憲兵で北朝鮮のスパイだった趙昶煕であり、彼はコックピットに侵入し、機長に対して銃を突きつけて脅迫しました。飛行機は軍事境界線を越え、約1時間後に北朝鮮の宣徳飛行場に着陸しました。

北朝鮮当局は、事件の翌日に操縦士による「亡命」であると主張しましたが、これは北朝鮮による組織的な拉致行為でした。ハイジャックの際、乗客は目隠しをされ、北朝鮮の戦闘機によってエスコートされました。

交渉と国際的反応

事件後、北朝鮮はハイジャックされた乗客や乗員を、人質として扱い、国際的な政治交渉に利用しようとしました。国連軍は迅速な送還を要求しましたが、北朝鮮はその要求を拒否し、交渉は長期化しました。この事件は国際的な非難を招き、国連は直ちに北朝鮮を非難する決議を採択しました。

結局、事件発生から2か月後の1970年2月5日、北朝鮮は民間団体の送還交渉を提議しましたが、その後約束を破り、送還の準備が整った時点で、まったく別の結果となりました。

未帰還の被害者

事件から約2ヶ月後の1970年2月14日、合同で39名の乗客が帰還しましたが、残りの11名については北朝鮮に留まったままとなりました。この11名のうちには、乗員4人と7人の乗客が含まれており、韓国政府からは北朝鮮による拉致被害者として認定されています。これらの未帰還者は、北朝鮮による拉致事件の象徴となっており、今なおその安否は不明です。

ハイジャック機のその後

ハイジャックされた日本航空機製造YS-11は、所有権が日本航空機製造にありましたが、運航は大韓航空が行っていました。この事件のために機体が北朝鮮に取られ、日本航空機製造には損失が発生しましたが、大韓航空はこの件に関して請求することができませんでした。後には、YS-11の機体が1973年から1974年にかけて、中国で修理されたことが報告されていますが、それ以降の情報は依然として不明です。

この事件は、韓国と北朝鮮の人間的、政治的関係において重要な歴史的背景を持っており、未解決の問題が今なお残されています。

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