大黒島 (室蘭市)

大黒島（だいこくじま）

北海道室蘭市、絵鞆半島の先端からほど近い沖合に浮かぶ小さな島が、大黒島です。室蘭港のまさに港口に位置しており、古くから港の歴史と密接に関わってきました。

概要

大黒島は、面積わずか0.024平方キロメートル、最も高い地点でも標高35メートル、周囲は約700メートルほどの小島です。その名前は、江戸時代後期の天保9年（1838年）から7年間にわたり、この地域の場所請負人を務めていた岡田半兵衛という人物が、航海の安全を願って島内に大黒天の石像を祀ったことに由来すると伝えられています。

また、この島にはもう一つの名があります。それは「オルソン島」です。これは、かつてイギリス船プロビデンス号に乗船していたデンマーク人水兵、ハンス・オルソンが事故で命を落とし、この島に埋葬されたという歴史的な出来事にちなんでいます。異国の地で亡くなった水兵の静かな眠りの場所としても、島は記憶されています。

過去には、噴火湾を横断する壮大な水中トンネルの建設計画が持ち上がった時期があり、その際に絵鞆半島と大黒島の間が、実験的な水中トンネルの建設候補地として検討されたこともありました。

現在、大黒島は自然環境の保護などのため、一般の方の立ち入りは原則として禁止されています。

室蘭灯台の歴史と土木遺産認定

大黒島は、かつて重要な海上交通の要衝であり、島内には室蘭灯台（大黒島灯台）が設置されていました。この灯台は、1891年（明治24年）に運用が開始されました。

現在の灯台の建物は、1926年（大正15年）に建てられたものです。特徴的な四角い塔の上に丸屋根が乗ったデザインは、当時の建築様式を今に伝えています。

しかし、時代の移り変わりとともに、灯台の役目は終焉を迎えます。1974年（昭和49年）に灯台の灯りが消され、さらに1978年（昭和53年）には航行の安全を知らせる霧笛も廃止されました。

役目を終えた灯台の建物は、長年の風雨にさらされ、老朽化が進んでいます。それでもなお、港の歴史を見守り続けたその存在は高く評価されています。

そして近年、この室蘭灯台の歴史的な価値が見直されました。2022年9月には、公益社団法人土木学会によって選奨土木遺産に認定されました。これは、歴史的な建造物や構造物が、その土木的な意義や景観への貢献などが評価されるものです。大黒島灯台は、北海道における灯台建築の歴史を伝える貴重な遺産として、その価値が認められた形です。

室蘭港との深い関わり

大黒島は、常に室蘭港の玄関口として、その歴史と発展を間近で見守ってきました。安全祈願の対象であり、異国の文化との接触の舞台となり、そして航行の安全を支える灯台が置かれた場所として、島の存在は室蘭港の物語に深く刻まれています。現在も沖合にその姿を見せ、港を行き交う船を見守り続けています。

室蘭港の風景には欠かせない存在であり、その小さな島には、かつての人々の営みや願い、そして国際的な交流の痕跡が静かに息づいています。

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