天一神

天一神（てんいちじん）とは

天一神は、方角を司る神様の一柱であり、十二天将のリーダー的存在です。中神、天乙貴人とも呼ばれます。この神様は天界と地上を行き来し、規則的に四方を巡るとされており、その滞在する方角を侵すと災いが起こると信じられていました。

天一神の出自

天一神の起源には諸説あり、帝釈天の家臣であるという説、北極星の精霊であるという説、荒ぶる神であるという説、さらには天女であるという説まで、様々な伝承が存在します。また、「中神」という別名は、十二天将の中心に位置することから、または、一つの場所に長く留まることから「長神」を意味するという解釈もあります。

天一神遊行（てんいちじんゆぎょう）

天一神は、一年のうち特定の期間、地上に降りて四方を巡るとされています。この期間を天一神遊行と呼び、以下の44日間が該当します。この間、天一神のいる方角は「塞（ふたがり）」とされ、その方角への移動や行動は忌避されました。特に平安時代にはこの信仰が強く、転居や旅行などの方違えは、天一神のいる方角を避けて行われていました。

天一天上（てんいちてんじょう）

天一天上は、暦における選日のひとつで、天一神が天上に帰る期間のことです。具体的には、癸巳（30番目）から戊申（45番目）までの16日間を指します。この期間は天一神の祟りがなくなり、どの方角へ出かけても吉とされています。そのため、相場師の間では、この期間に相場が上昇するという縁起の良い言葉としても用いられていました。ただし、天一神が天上にいる間は、代わりに日遊神が地上に降りてきて家の中に留まるとされています。そのため、この期間は家の中を清潔に保つ必要があり、怠ると日遊神の祟りがあるとされていました。

また、その年の最初の天一天上の初日は「天一太郎」と呼ばれ、特に縁起の良い日とされています。この日に雨が降ると、その後の天候が良くないとされ、その年の豊作や凶作を占う指標とされていました。

まとめ

天一神は、古代から日本人の生活に深く根ざした方位神であり、その信仰は、人々の行動や生活様式に大きな影響を与えてきました。天一神遊行や天一天上といった概念は、現代においても暦に記載され、私たちの生活に影響を与えています。これらの知識は、日本の文化や歴史を理解する上で重要な要素と言えるでしょう。

参考文献

* 岡田芳朗、阿久根末忠『現代こよみ読み解き事典』柏書房、1993年。ISBN 4-7601-0951-X。

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