天井桟敷

天井桟敷（てんじょうさじき）

天井桟敷とは、劇場における最後方、最上階の天井にほど近い場所に設けられた観客席を指します。舞台からは最も遠い位置にあり、一般的には劇場内で最も安価な席として知られています。

別名

俗に「向う桟敷」や「聾（つんぼ）桟敷」とも呼ばれます。これらの別名は、舞台から遠く、音が聞こえにくい、または舞台が見えにくいといった、席の位置に由来するものと考えられます。

特徴

安価な席: 天井桟敷は、通常、劇場内で最も安価な席として提供されます。そのため、比較的経済的な余裕がない観客や、頻繁に劇場に通う常連客に利用されることが多いです。
常連客の集まる場所: 安価であるため、同じ劇場に何度も足を運ぶ常連客が、この席を好んで利用する傾向があります。劇場によっては、天井桟敷に特定のファンコミュニティが形成されることもあります。
独特の雰囲気: 舞台全体を見渡せる一方、演者の表情や細かな演出は見えにくいという特徴があります。そのため、舞台の雰囲気を楽しむことに重点を置く観客に適していると言えるでしょう。

有名な天井桟敷

ミラノ・スカラ座: イタリアのミラノにあるスカラ座は、世界的に有名なオペラハウスであり、その天井桟敷もまた、歴史と伝統を感じさせる空間として知られています。
東京歌舞伎座の幕見席: 歌舞伎座では、一幕見と呼ばれる、特定の演目のみを鑑賞できるチケットが販売されており、その席が天井桟敷に位置しています。気軽に歌舞伎を楽しみたい観客に人気があります。歌舞伎座をはじめ、歌舞伎を恒常的に上演する劇場では、この「天井桟敷」のことを一般に大向う（おおむこう）という（枡席を参照）。

天井桟敷に関連する作品

天井桟敷の人々: 1945年に公開されたフランス映画『Les enfants du Paradis』の邦題です。マルセル・カルネ監督の傑作として知られ、舞台芸術の世界を描いています。
* 天井桟敷 (劇団): 1960年代後半に、寺山修司が主宰した前衛劇団です。上記のフランス映画に触発され、その名前が付けられました。演劇界に大きな影響を与えたことで知られています。

天井桟敷は、単なる安価な席というだけでなく、劇場文化の一側面を象徴する存在と言えるでしょう。舞台との距離、そこに集う人々、そして独自の雰囲気は、劇場体験を豊かにする要素の一つとなっています。

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