観客席

観客席とは、スポーツ施設、劇場、コンサートホール、イベント会場などに設置された、観客のための座席のことです。観覧席とも呼ばれます。

観客席の構造と工夫

観客席は、前の観客の頭が邪魔にならないよう、座席を互い違いに配置したり、後方の観客も見やすいように階段状に設計されていることがよくあります。階段状の観客席は、競技場や野球場などではスタンドとも呼ばれます。

中世フランスのジュ・ディ・ポームというスポーツは、修道院の中庭で盛んに行われ、そこが試合場（コート）として使われました。教会や裁判所などにも、観客席とは呼ばないものの、人々が注目する場所には座席が設けられています。大学の講堂なども、講演会や演奏会の会場として利用されることがあります。

多様な座席の種類と名称

観客席には、様々な種類があります。

ペアシート: 二人で利用できる座席
車椅子席: 車椅子利用者のための座席
介添席: 車椅子席の隣に設けられた介助者のための座席
枡席: 大相撲で見られる座席
溜席（砂かぶり）: 大相撲の土俵近くの座席
特別観覧席（特観席）: 公営競技場の有料指定席
貴賓席: 特別な客のための座席
記者席: 報道関係者のための座席

階層による違い

2階以上の席は、階上席、ギャラリー、ベランダ、バルコニー席など、様々な名前で呼ばれます。修道院の回廊がスポーツ観戦に使われたことから、「ギャラリー」という言葉が生まれました。歌劇場には、貴賓室としてのボックス席（オペラボックス）があります。劇場の正面席は Mittelloge、royal box と呼ばれ、最上級の貴賓室となっています。天井近くの席は、The gods と呼ばれる最も安価な席です。歌舞伎では、桟敷席と呼ばれる席があり、天井近くの席は天井桟敷と呼ばれ、一番安い席となります。平成中村座には、舞台背後から覗き見る桜席と、真正面から見るお大尽席があります。

傾斜角

横浜スタジアムの観客席の最大傾斜角は30度です。これは、都市公園法の関係で建ぺい率に制限があったため、急勾配にせざるを得なかったという事情があります。神宮球場の内野席は、前方約13度、後方約28度となっています。一方、サッカーやラグビーのスタジアムでは、臨場感を高めるために急傾斜（40度以上）の観客席が採用されることがあります。大田区総合体育館の設計者は、NBAのようなすり鉢状の観客席を理想としましたが、法的な制約で実現できなかったと語っています。

車椅子席

国際パラリンピック委員会（IPC）は、プロスポーツ会場における車いす席の割合を0.5％と定めています。五輪では0.75％以上、パラリンピックでは1 - 1.2％以上とされています。2015年の調査では、プロ野球とJリーグのスタジアムのうち、この基準を満たしているのはごく一部でした。国土交通省は、車いす席を全体の0.5％に設置するガイドラインを示しましたが、法的拘束力はありません。2020年東京オリンピック関連施設については、全体の0.75％以上とする指針案が検討されています。

スポーツ イベントにおける観客席

大きな国際大会では、観客席に関する規定条件が定められることがあります。サッカーのFIFAワールドカップでは、観客席の収容人数や屋根の有無などが規定されています。ヨーロッパやFIFAなどの競技場設計では、観客席からの視界のクオリティー評価として「C-VALUE」という値が用いられます。

ピッチの周囲を陸上競技用トラックで囲まれたサッカースタジアムでは、観客席からの距離が遠くなるため、可動式の観客席を設置して対応することがあります。

ライブ会場における観客席

ライブ（コンサート）の会場では、ステージが一部見えづらい席を「サイドシート席」として販売することがあります。「見切れ体感席」「見切れ席」と呼ばれることもあります。AKB48のコンサートでは、「死角席」やステージ真裏で一切見えない「音席」が販売されたこともあります。

観客の転落防止のため、2階席の最前列などが立ち見禁止となる場合があります。「ファミリーシート」などの名称で、着席専用席が設けられることもあります。機材・演出の都合上による「着席指定席」も存在します。

アリーナ席

日本では、野球場や体育館などにおいて、臨時に特設された席を「アリーナ席」と呼ぶことがあります。元々は、古代ローマの円形劇場にあった闘技場のことを指します。コロッセオでは、観客席が身分によって分けられていました。

観客席

観客席