枡席

枡席について

枡席（ますせき）は、日本における伝統的な観客席を指します。この席は、土間や板敷きの空間を木の枠で仕切り、複数の人が座れるようにした四角形を「一枡」として提供されます。このような形式は、他の観客席と同様に、日本の芸能文化の重要な一部を形成しています。

歴史的背景

枡席の起源は、古代にまでさかのぼります。「仮庪（さずき）」と呼ばれる、神の依代となる仮設の棚状の構造物が観客席に転用されたことが、枡席の成立へとつながったという説があります。中世の日本では、芸能が神事から娯楽に変わる過程で、能や猿楽を観るために特別な感覚をもった席が設けられ、主に高貴な人々が使用するようになりました。

その後、枡席は江戸時代初期に歌舞伎や人形浄瑠璃の芝居小屋で広まります。当初の枡席は、土間と呼ばれる土で作られた床にあり、そこでは仕切りがありませんでした。しかし、1724年に瓦屋根の芝居小屋が登場し、雨天でも上演できるようになると、軒並み土間が板敷きに改修され、仕切りのある枡席が発展しました。

枡席の構造と料金

当時の枡席は「七人詰」と呼ばれ、料金は一桝あたり25匁でした。観客は家族や友人と共有しながら芝居を楽しむスタイルでした。一方で、飛込み客が入る際は「割土間」として、七つに分けた料金で他の人と相席することが一般的でした。

芝居小屋の設計も変化し、両脇に設けられた中二階の桟敷や、その上の上桟敷という構造も現れました。これにより、観客は舞台の視界に応じて様々な料金を支払うこととなり、近年の相撲興行でも根強く続くTraditionとなります。

現代の枡席

明治時代に入ると新たな劇場が次々に建てられ、大部分が枡席を取り入れました。しかし、1889年に完成した歌舞伎座では全席が椅子席となり、以降の劇場では枡席が減少していきました。相撲興行では、枡席が常に存在し続け、新しい競技場でも使用されています。

枡席の特徴は座布団が敷かれ、観客は近くで繰り広げられる演技や相撲を楽しむことができることです。また、演目の合間にはお茶屋から弁当や飲み物が運ばれ、観客にとっての「居住性」も求められました。

現状と課題

現代の国技館や体育館では、枡席が依然として重要な役割を果たしており、一階席の多くが高土間式の枡席となっています。しかし、料金の設定や、座る人数によっては窮屈さも感じるため、新たに「二人枡」や「三人枡」といった形態も試みられています。

加えて、チケット購入方法に関する課題もあり、多くの良い枡席が特定の茶屋に占有されているため、一般には手に入りにくい現状があります。これらの問題は、今後の大[[相撲]]や伝統芸能における観客動向に重要な影響を与えることでしょう。

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