天保十二年のシェイクスピア

天保十二年のシェイクスピア

井上ひさしによる戯曲『天保十二年のシェイクスピア』は、1974年に初演されたもので、シェイクスピア全37作品の要素を取り入れた壮大な任侠劇です。作品は江戸末期の下総国、清滝村を舞台にしており、様々な登場人物の人間関係や陰謀を描いています。初演では、観客が終電に間に合うよう途中退場することもありました。この作品は上演時間が4時間以上に及び、そのため上演の機会が限られています。

あらすじ

物語は、下総国の旅籠（はたご）街で展開されます。老侠客とその三人の娘たちが、父親から身代を譲られることをきっかけにした争いを繰り広げます。主人公の佐渡の三世次は無宿の渡世人で、つらい過去を抱えつつも、他のヤクザの抗争に乗じて出世を目指します。

主な登場人物

• - 佐渡の三世次: 顔に傷を持ち、片足に障害を抱えた渡世人。シェイクスピア作品の多くのキャラクターの要素を集めた象徴的なキャラクターです。
• - 鰤の十兵衛: 元々はブリ漁師で、清滝の顔役。娘たちに身代を譲ることを考えています。
• - お文: 十兵衛の長女で、父に反発し、冷酷な行動に出るキャラクター。
• - お里: 腹違いの妹で、父を裏切る計画を進めます。
• - お光: 三姉妹の末娘であり、捨て子。自らも強い意志を持っています。

物語には、他にも多くのシェイクスピアのキャラクターを反映した登場人物が登場し、複雑な人間関係が描かれています。特に重要なのは、シェイクスピア作品との微妙な関係性が織り込まれている点で、各キャラクターの行動やセリフには原作の影響が色濃く現れています。

例えば、十兵衛のセリフは「リア王」の名場面を彷彿とさせるものがあり、王次が「ハムレット」の影響を受けていることが見受けられます。また、作品中には独自の笑いや皮肉も散りばめられており、観客に新たな視点を与えています。

作品の上演歴

この戯曲は1974年の初演以来、2002年、2005年にも上演されました。特に2002年の上演では、鴻上尚史が企画監修として参加し、2005年には井上自身が戯曲の改訂を行いました。上演の演出家には出口典雄、いのうえひでのり、蜷川幸雄など豪華なメンバーが揃っており、それぞれのアプローチで作品が再生されています。

受賞歴と影響

本作は高橋一生が主演した2020年の公演により、第45回菊田一夫演劇賞を受賞するなど、その評価は高まっています。作品は日本の演劇界に大きな影響を与え続けており、今後も新たなアプローチで再演されることでしょう。学校での演劇教育や一般的な演技研修においても、この戯曲は学生たちに多くの学びをもたらしています。シェイクスピアの作品が背景にあるため、外国文学との橋渡しの役割も果たしています。

以上が『天保十二年のシェイクスピア』に関する概要です。この作品が持つ多層的なテーマやキャラクターの魅力は、観劇することで新たな発見へと導いてくれるはずです。

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